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インドにおける盲ろう・重複障害をもつ子どもにたいするアプローチの変化

Akhil S. Paul
理事長 センス・インターナショナル (インド)

現在の状況

感覚障害と重複障害はわが国では新しい分野である。しかし、この分野の長所は専門家と密着したアプローチの方法にある。専門家たちはお互いから学びあい、この初期の段階においてさえ、重複障害をもつ子どもたちとの活動に意義を見出している。今日まで、この分野では障害者のニーズが基本であった。その結果、サービスは地域、ターゲット・グループやサービスの目的によって異っている。このことは短い期間で多種にわたる介入(intervention)方法が発展し、モデルの多様性を導く結果となった。

盲ろうは視覚障害と聴覚障害との二つの障害が合わさった状態であり、「コミュニケーション、移動、情報へのアクセスへの非常に大きなニーズ」がある。盲ろうあるいは重複障害をもつ子どもはしばしば、学校で孤立する。というのは彼らから十分な可能性を引き出すには、思いやりのある、独創的な教育的なアプローチが必要だからである。盲ろうの障害を持つ子どもや親にとってサラマンカ宣言は突破口であった。サラマンカ宣言は盲ろう児の特殊なニーズについて言及した最初の国際的宣言である。しかしながら、センス・インターナショナル(インド)とその協力者とがそれぞれの経験を通して言えるのは、サラマンカ宣言は、学校教育への機会を欲している多くの盲ろう児にとって少しも、あるいはまったく現実的な影響力を持たない、ということだ。メインストリームあるいは特殊教育の場において、どのように盲ろう児を支援するかについてほとんど理解されない状態が続いている。それどころか、サラマンカ宣言は政府が特殊教育分野への支援金を削減する理由に使われている。1994年のころと同じように現在も圧倒的多数の盲ろう児は除外されたままである。

障害者(均等機会、権利保護と完全参加)法〔Persons with Disabilities (Equal Opportunities, Protection of Rights and Full Participation) Act, 1995はわが国の障害者たちに大きな励ましとなった。サービスを提供するため必要な障害の確認や障害要因の特定を行えば、基本施設の建設などが前向きになる。その動きはインドの障害者とって有意義なことで大いに受け入れられる。しかしながら、「重複障害」は1995年に制定されたこの法律で別個の障害として分類されていない。その後、重複障害と視覚障害関連の専門家と障害児の親たちはこの問題に前向きに取り組み、彼らのニーズを政府に訴えた。その努力は障害認知の増加と重複障害者への予備的支援の増加となり、やがて政府に対する重複障害者を独自の障害分野として認める要求への強い働きかけとなった。

「自閉症・脳性小児麻痺・精神遅滞・重複障害をもつ人々の福祉のための国家信託基金」では重複障害を独自の単独の障害として認めている。この法は重複障害者とその家族を支援しており、障害の理解を促進するための会が都会や農村地域で開催されている。政府は重複障害に関する情報の収集、デイケアの施設設立、重複障害児・者のレスパイトケアサービスに対しても支援を行う。同基金は重複障害をもつ子どもの親にとっても恩恵であり、最も大きな恩恵は親が子どもに対する認識を変えたことである。同基金は親が、子どもの現在や未来の決定へのキーパーソンであるとしており、この信条は地方のいろいろな団体の活動を通して推進されている。

現在の枠組みと盲ろう・重複障害

私たちは貧困ライン以下の家庭の子どもに対し、小学校の授業料と昼食は無料とすべきだという意見に賛成である。「教育は全員に」であるべきだ。そのような枠組みは学校の就学率を上げていると聞いている。さらに、女児を含めて、ますます子どもたちが学校に来るようになるだろう。農村部の盲ろう児と重複障害児の家庭は、多くの場合、子どもたちを無料で昼食を提供する学校に通わせる(理にかなっている)。多くの子どもたちが学校に通ってくれば、教育専門家として、私たちはメインストリーム・クラスに子どもを受け入れ、学習と自立の手助けをする多くの機会を得ることができる。

しかしながら、村の学校では通常35人から40人を1クラスに詰め込み、授業は野外で行い、黒板は古ぼけたボロボロのものを使っている。村には小学校の教師が一人しかいないため、6歳から10歳の子どもたちが同じクラスで一緒に学んでいる。教師は全ての子どもは学校に通うことができる、ということを理解しているが、盲ろう児や重複障害と視覚障害をもつ子どもはもちろんのこと、障害のある子どもをどのように教えていいのかわからないのが現実だ。

特殊学校に対して異なる意見もある。今までのろう学校や盲学校には障害を併せ持つ生徒の数が少なかった。そのような子どもたちは「知能の発達が遅れた子ども」と分類されていた。そのような子どもが4,5人クラスにいれば、彼らは「学習についていけない子ども」として特殊クラスに移される。そのようなクラスは通常のカリキュラムを用いず、木製のパズルで遊んだり、工作などを行う。

他の障害を併せ持つ盲ろう児や視覚障害児を普通学校に入れるべきか、特殊学校に行かせるべきかが重要な問題なのではない。もっと重要な問題は、彼らのニーズを教育政策の中でいつ確認し、汲み上げるかである。たとえば、盲ろうは明確な障害とみられていない。国家教育計画である「国民皆教育」計画は盲ろう者について言及していない。この計画を推進するための基本的な統計もない。評価のための資料もない。つまり、盲ろう児とその親たちはこの計画から排除されているのだ。

インドでは、インクルージョンの考え方は、地域に根ざしたリハビリテーション(CBR)・プログラムの中で評価が低い。村の家々を訪ねて重複障害をもつ盲ろう児に教育をしている訪問教師たちは、この子どもたちを教育するのは可能であり、学習をサポートする特殊教育は可能であると説いて廻っている。CBRプログラムでは、子どもたちは幼い時期であれば、障害を見つけることができるとしている。つまり、初期の発達段階における障害を見過ごしてはならない、ということだ。

未来への約束

1.特殊学校はそのドアを開かねばならない:

特殊学校に精神遅滞、視覚障害、ろう、整形外科的障害、自閉症・脳性小児麻痺をもつ子どもたちを含めることは重複障害をもつ子どもにとって必然である。重複障害をもつ子どもの親は特殊学校・センターにアドバイスと援助を求めに来る。家族は 自分たちの子どもに対して医学的にできることは何もない、ということがわかった後、必死になって、学校の専門家に前向きな意見を聞きに来るのだ。特殊学校の教師はそのような親と子どもが最初に接触する人たちであり、専門知識をもつ教師は重複障害をもつ子どもの特徴やニーズについて知っておかねばならない。専門知識をもつ教師は評価のしかたやリハビリテーション・プログラムについて、学校活動の範囲内で知識・技術を磨かねばならない。この時点での正しい情報や正しい照会は子どもにとって非常に大きな違いを生じる。

残念ながら、現実では、盲ろう児または視覚障害をもつ重複障害者(MDVI)はこの特殊学校から拒否されている。というのは、子どもたちは特殊学校が対象としているターゲット・グループから完全に外れるからである。時として情報不足、専門技術・基本的施設の不足、人材の不足が言い訳に使われるが、ほとんどの場合、学校側が重複障害をもつ子どもを教える際の気配りや思いやり、熱意が不足しているのである。そのため、子どもたちは孤独や絶望の殻の中へ追いやられている。

2.サービス活用へのニーズ

前に述べたように、この分野はまだ経験が浅い。親、地元のNGO、自治体は徐々に盲ろう者・視覚障害をもつ重複障害者MDVIを別個の障害分野だと思うようになった。さらに、精神遅滞、視覚障害、聴覚障害とも性質が違い、また精神障害とも全く違うということをだんだんと理解し始めた。重複障害をもつ子どもを正確に見極めることと彼らに適切なサービスを提供することの重要性を理解することは今、始まったばかりである。しかしながら、冒険的なリーダーシップとその活動力は第一線でさらに必要である。

この国で現在使うことのできる基本的施設は、このリーダーシップを推進する上で大きな可能性を担う。障害者法では盲ろう者・MDVIを別個の障害分野としている。その法律はターゲット・グループに対してより良い確認方法とサービスの向上を裏付けることになるだろう。「自閉症・脳性小児麻痺・精神遅滞・重複障害をもつ人々の福祉のための国家信託基金」は 一生に渡って重複障害をもつ人たちとその家族への支援を促進し、幼少時期から青年期にわたるサービス提供を確立する可能性を持っている。

各種の国立施設は、障害を発見、確認し、モデル・サービスシステムを設立する際に大きな力となり、いろいろなターゲット・グループの重複障害に関する情報の発信に際してリーダーシップ的役割を担うことができる。

強力なNGOは国家、地区、区域レベルで地元で活動をすることが主な役割である。地元のNGOはその地域で広く行き渡った支持層があり、社会の意識改革を推進する力を増していく。そのようなNGOは障害に対する感性を磨き、ニーズを持つ人々を審査し、確認するのに格好な所にいる。彼らは他の行政機関や民間団体と連携することによって、重複障害をもつ子どもやその家族へのサービス供給のために、地元の基本施設の設立を推進することが可能である。

親たちの組織(Parent Association)もまたこの分野における前向きな変化を引き出す役割を担う。彼らは中央政府や地方自治体が盲ろう・重複障害をもつ人々への政策やシステムを構築する方向への影響力を探っている。

インドでは以下に述べる分野が出現している:

結論

ニーズに根ざした盲ろう・MDVI分野の積極的活動によって地元や地域レベルで行われる介入の新しいやり方やサービスが出現した。これらの積極的活動によって、我々は伝統的なアプローチを見直し、新しく最も効果的な方法を強化し、さらにこの分野に組み込む方法を探している。

いくつかの核となる運動が政府とNGOによって行われている。視覚障害、聴覚障害、精神遅滞などの単独の障害にたずさわっている教師がこの運動を理解するための通常のワークショップは、これらのグループのニーズに答えて開催されている。これらのワークショップは教師が重複障害をもつ子どもを把握し、理解する上での基本的技能を身に付けることを目的としている。

さらに注目に値するのは、大学の障害分野の大学コースには現在、重複障害の分野が含まれていることだ。コースを終えた特殊教育の教師は子どもたちが持っているかもしれない重複障害を発見し、適切な介入プログラムを作り実行できると期待される。単一障害の子どもたちを教えている教師に対する重複障害コース習得の通信教育や遠隔教育の可能性もまた検討する必要がある。

(仲野純子:訳)

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