蛍光灯の白い唸り。夜の情報処理教室で、モニターの光が創の顔を照らす。窓の外は冬の星。キーボードの打鍵が鼓動みたいに速くなる。
創(M):(決意) 俺、筑波技術大学の情報システム学科に入る。入ったら、開目さんとアイくんと、一人称視点のアクションゲームを作る。身体で掴めるスピード、耳で進路が見えるやつだ。
顧問(M):(励まし) 目標が具体的だ。いい風だな、創。道は険しいが、地図はもう手にしている。必要なのは歩き続ける脚だけだ。
アイ(M):(興奮) 受験終わったらすぐプロトタイプやろうぜ。操作系は二系統で試す。スプリント+パルクール、あと酔い対策に視野角とカメラの補正。俺も全力で勉強する。
開目(F):(頼もしさ) 合格したらラボ案内するよ。エンジンはUnityで素早く回して、物理と描画はUnrealで検証、どっちが手に馴染むか一緒に決めよう。音の設計は私がやる。
創(M):(静かな炎) やります。今の俺の全部を、次の俺の材料にする。必ずたどり着いて、一緒に作りたい。
窓から差す月光が、紙に書かれたスケッチのラインを銀色に縁取る。走る手、走る未来。
大学のプロジェクトルーム。ホワイトボードに矢印と数式、床にVR機材とコントローラ、壁に貼られた“息を合わせろ”的なメモ。ファンが回る音の中、三人はモニターの前に身を寄せる。
創(M):(集中) 視点は頭ではなく胸元で揺らす。ジャンプの頂点で0.08秒だけ補間して、落下の見通しを作る。これで三半規管に優しい。
開目(F):(情熱) 足音は素材以外に意図を混ぜよう。右足に少しだけ高い周波数、左足に低い。方向感が出る。壁走りの接地音は帯域を狭めて、接触の安心感を強く。
アイ(M):(嬉々) パッドとキーマウ両対応。スライド入力の先行を15ms取って、流れる操作感を担保。あと、色覚多様性対応のUIパレットを三種類用意した。
指導教員(F):(冷静) よく走る。でも、プレイヤーが“走らされている”と感じない導線を。選択肢を見せながら速度を落とさないレベルデザインを考えよう。
創(M):(ひらめき) ビートラインを視界の端に置く。進路の“候補”を光と風の粒で出す。選ぶのはプレイヤーだ。
開目(F):(躍動) イベントレスでも音で高揚を作れる。呼吸音と環境音を同期させる“脈”を仕込もう。速く走るほど世界が歌う。
アイ(M):(自信) じゃあ今夜のビルドは“脈拍0.3.7”。学内テスト走らせて、フィードバック回収。
創(M):(感謝) 一歩ずつ、でも確かに速くなってる。ありがとう、二人とも。
薄明のキャンパス、廊下の先に朝焼け。三人の影が、一本の線みたいに伸びていく。
春。卒業制作発表会の拍手がまだ手のひらに残っている。ポートフォリオの表紙に“FIRST PULSE”のロゴ。会場から少し離れた面接室で、緊張と期待が同じ心拍を刻む。
面接官(M):(興味) 一人称の速度表現、酔い対策と自由度の両立が見事だ。君は現場で何を担いたい?
創(M):(真摯) 体験の“芯”を設計したいです。プレイヤーの身体感覚と世界の反応を、最短で結ぶ導線を引く。企画と実装の橋を架けます。
面接官(M):(評価) いい橋だ。制作中のチームでどう衝突を解決した?
創(M):(率直) 衝突は“音”で解けました。意見が割れたとき、実装した二案に開目さんの音をそれぞれ当て、ブラインドテストで決めた。選ばれたのは“遊びが歌うほう”。数字と感性、両方で納得を作りました。
面接官(M):(満足) 合格の連絡を楽しみにしていてくれ。
廊下に出ると、ガラス越しに桜が揺れている。スマホが震え、通知が光る。
アイ(M):(歓喜) 俺、エンジンチーム内定!創、そっちは?
創(M):(こみ上げる) きた。ゲームデザイン枠、内定だ。
開目(F):(誇らしさ) 私はサウンドデザインのスタジオへ。ねえ、卒業しても“脈”は止めないでいこう。
創(M):(固い握手) もちろん。ここからがスタートだ。
都内のイベントホール。新作発表会。巨大スクリーンに映る都市の屋根と走る手。歓声。SNSのタイムラインが光の滝みたいに流れていく。
司会(Q):(高揚) 次のタイトルは、新進気鋭のゲームデザイナー・創さん率いるチームの最新作。“FIRST PULSE: Skyline”。身体で聴き、耳で走る、一人称視点のアクションです!
創(M):(感謝) この“脈”は、最初の夜に描いた細い線からはじまりました。開目さんの音、アイくんの手触り、たくさんの仲間とプレイヤーの声が、太い動脈にしてくれた。
開目(F):(喜び) 世界が歌う瞬間を、あなたの足で掴んでください。
アイ(M):(誇らしさ) 走れる限り、僕らはアップデートし続ける。ここからもっと速くなる。
プレイデモ。キャラクターが屋根から屋根へ、風が鳴り、街が鼓動する。観客の息が合い、歓声が波になる。
創(M):(静かな確信) 夢は“向こう”じゃなかった。手を伸ばした先で、仲間と作る“今”だった。これからも作り続けます。あなたの脈とつながるゲームを。
拍手。光。走る影。夢の現場で、彼の心拍は穏やかに、そして力強く刻まれ続けた。
蛍光の唸りとモニターの海、鼓動みたいに跳ねる指先
細い線から始まった約束、冬の星が肩を押す
胸で揺れる視界に風を刺し、耳で進路を描く
右は高く左は低く、足音に方角を宿す
光と風の粒が踊る、選ぶのは僕らの脈
衝突は音でほどけて、遊びが歌に変わる
走らされない導線は、自由の速さを守る
脈拍0.3.7の夜、世界が息を合わせる
夢は向こうじゃない、伸ばした手の今にある
手触りと歌を束ねて、太い動脈で駆け出そう
ガラス越しの桜が揺れ、握った手に橋がかかる
選択肢を見せたまま、速度を落とさず進め
世界が歌う瞬間へ、FIRST PULSEは続く
屋根と屋根のあいだを、呼吸で渡るスカイライン
夢の現場で知った答え、今を作ること