[桜が風にほどけ、構内の案内ボードに「情報システム学科」の文字。テント列の一角に「サウンドテーブルテニス」の横断幕。]
いろは(F):(わくわく)今日から、筑波技術大学・情報システム学科一年、いろは。私、ここで世界を変える技術をぜんぶ吸い込んで…いつか「世界征服アプリ」を作る。征服って言っても、怖いのじゃない。世界の心を、やさしく制するやつ。そう決めた。
そらくん(M):(明るく)やあ、新入生?もし良かったらサウンドテーブルテニス、体験していかない?音でラリーするスポーツなんだ。楽しいよ。
いろは(F):(興味津々)音で?…面白そう!私はいろは。情報シス。
いわおくん(M):(穏やか)ようこそ、いろはさん。手首貸して。ラケットの重さ、ちょうどいいの選ぶから。緊張しなくて大丈夫、音が道しるべ。
いろは(F):(照れ)ありがとう…あ、私、将来やりたいことがあって。世界征服アプリを作るんだ。
そらくん(M):(冗談)征服…って、地球制服のサイズ合わせから?
いわおくん(M):(くすり)採寸係は任せて。でも本気の夢なら、応援する。ここなら、音もデータも、人の気持ちも、ぜんぶ学べる。
いろは(F):(決意)二人と友だちにならせてください。まずは音のラリーから、世界征服の第一歩!
[三人の笑い声が、ボールのコロコロという鈴の音に溶けていく。]
[体育館。静寂に、鈴入りボールの音が筋書きを描く。いろはの耳が弦のように張る。]
そらくん(M):(真剣)音は嘘をつかない。左に転がるときは低く、近づくときはピッチが上がる。心も似てる。近づけば、違いが聞こえる。
いわおくん(M):(落ち着いて)情報システムは構造を作る学問。けど構造の中で動くのは、人の息や温度だよね。
いろは(F):(ひらめき)だから…世界征服アプリは、人の違いを消さずに響かせる設計にする。音声、触覚、文字…複数の道で同じ場所に行けるように。誰も置いていかないルーティング。
そらくん(M):(高揚)名前は?
いろは(F):(楽しげ)「HEART CONQUEST」。征服の定義をひっくり返す。街ごとの「やさしさミッション」をクリアすると、ハートが灯る。ハートが増えると、音色が変わるの。世界地図が、音の交響曲になる。
いわおくん(M):(うなずく)ゲームみたいで、現実がちょっと良くなる。アクセスしやすさは最初から。音でも触っても読んでも、同じ喜びに届く。
そらくん(M):(冗談)世界征服=世界の心をトロフィーに。悪くない。
いろは(F):(情熱)学んだアルゴリズムや設計は、人を包むために使う。勝手に決めた。
[ラリーが終わる。汗の粒が光り、三人の呼吸が揃う。]
[モニターの光が窓に滲む。壁のホワイトボードには丸と矢印、付箋の海。]
いろは(F):(集中)マップの音色は地域ごとに差が出る。ハートが増えると和音が厚くなる…うん、このフィードバックで「続けたくなる」を優しく生む。
そらくん(M):(冷静)通知は控えめに。ユーザーの時間はユーザーのもの。
いわおくん(M):(慎重)データは匿名化、地域の声は対話で拾う。数値の裏に人がいること、忘れない。
いろは(F):(微笑)私たち三人の合言葉、仕様書の一行目にする。「やさしさは設計できる」。
[テスト端末のスピーカーから、かすかな和音。通知が「おめでとう。となりの人の声を聞けた日」と囁く。]
そらくん(M):(高揚)リリース、いくよ。世界へ。
いわおくん(M):(静かな闘志)鳴らそう、最初の和音。
[数週間後。同じ部屋。世界地図が音で脈打つ。各地から届く「灯ったハート」の投稿。]
いろは(F):(感極まって)見て…学校、会社、町内会、病院、サークル…小さなミッションが連なって、街のコード進行が変わっていく。
そらくん(M):(嬉しい)サウンドテーブルテニスの大会でも使われてる。会場アクセス、ボランティア連携、初参加の人の緊張も和らいだって。
いわおくん(M):(穏やか)征服って、支配じゃない。ほどけた糸を、やさしく結び直すこと。
いろは(F):(決意)次は、もっと多言語に、もっと多感覚に。世界の鼓動に遅れないように。
[国際フォーラム。大スクリーンに「HEART CONQUEST」の地図。色ではなく音が会場を満たし、各地のハートが鳴き交わす。]
いろは(F):(堂々)私たちの「世界征服」は、やさしさの伝播です。誰かの困りごとを見つけ、声をかけ、手を差し出す行為を、遊び心と設計で後押しする。征服指数は、支配の記号じゃない。今日、ここで「幸福指数」に改名します。
そらくん(M):(ユーモア)つまり、世界幸福アプリ。略して、しあわせ。舌噛みそうだけど。
いわおくん(M):(真摯)技術は道具。道具は、握る人の心で変わる。僕らはこれからも、心のほうを磨く。
[舞台袖から卓球台が現れる。サウンドテーブルテニスのデモ。鈴のボールが、世界地図の和音と不思議に溶け合う。]
いろは(F):(高揚)始めよう。音でつながるラリー。ここから先も、何度でも。
[ラリーが続く。観客席のあちこちで、スマホが小さく震え、「あなたの隣にハートが灯りました」と囁く。]
いろは(F):(静かに)征服完了。支配じゃなく、共鳴で。世界はいま、やさしさに占領されている。
[照明が落ち、最後の和音が深く息を吐くように会場を包む。三人はラケットを胸に当て、客席に頭を下げる。拍手が、波のように返ってくる。]
桜ほぐれ 新入生バッジが光る朝、サウンドテーブルテニスが呼んだ
鈴のボールが道を描き、私の耳は未来の弦を張る
いろは宣言 世界征服はやさしさで、心をそっと制する設計
音は嘘をつかない 左で低く 近づけば高く、違いが歌になる
触れても読んでも聴いても届く道、誰も置き去りにしないルーティング
HEART CONQUEST 灯るハートが和音を増やし、地図は交響へ変わる
やさしさは設計できる—通知は静かに、時間は君のもの データの向こうに息
征服を幸福へ言い換えて、ラケット胸に 世界は共鳴で占領された