- [トップページへのリンク](https://www.cs.k.tsukuba-tech.ac.jp/labo/sekita/takeshita/training_alone/) - ファイルへのリンク - [オリジナルwordファイル](220411_HK結果図の解説.docx) - [このページのmarkdownファイル](hヘルスキーパー版230315.md) # 2. 当事者ヘルスキーパーに必要な「働くスキル」と発達プロセス ここでは、視覚障害当事者にとって最も多い就業先である、鍼灸マッサージ業、中でも近年期待が高まる「企業内ヘルスキーパー」を見てみましょう。 事務系職種研究の一環として収集された当事者ヘルスキーパー2名(弱視者)及び上司2名(晴眼者)のデータを分析しました。 ## 2.1 上司が観察した当事者ヘルスキーパーのスキル ```mermaid flowchart 未発達の技術スキル ==> 技術的スキルの発達 未発達の対人スキル ==> 対人的スキルの発達 未発達の対人スキル -.-> 雰囲気の悪化 subgraph 未発達スキル 未発達の技術スキル 未発達の対人スキル 未発達の認知スキル end subgraph スキルの発達 技術的スキルの発達 対人的スキルの発達 end subgraph 未発達の技術スキル 技術指導のない環境 end subgraph 未発達の対人スキル 負の反応傾向 感情的でストレートな言動 end subgraph 未発達の認知スキル 自己中心的な思考 障害帰属による仕事の回避 フォロワー的視点による率先性の欠落 end subgraph 技術的スキルの発達 得意技の分化 end subgraph 対人的スキルの発達 職場 顧客 end subgraph 職場 立場の正当化 愛されキャラ end subgraph 顧客 次につながる会話 end ``` **図2.1 当事者ヘルスキーパーのスキル発達過程(上司観察)**([markdownテキストへのリンク](SFig2_1当事者ヘルスキーパーのスキル発達過程(上司観察).md)) 図2.1 は、上司が観察した当事者ヘルスキーパーのスキルの発達過程です。 この図の1つ目のポイントは、スキル別の発達可能性の違いです。 太矢印で示されているように、対人的なスキルと技術的なスキルは、当事者の努力や上司の支援で発達します。 しかし、認知的なスキルは未解決です。 2つ目は、職場レベルの発達も重要であることです。 対人的スキルが未発達な職場では、雰囲気が悪化します。 ## 2.2 当事者ヘルスキーパーが自覚したスキル ```mermaid flowchart 職業観 .-> 多層的なスキル発達 周囲との関係 .-> 多層的なスキル発達 subgraph 職業観 他職種での挫折経験 専門職としての自分 マンネリ化 end subgraph 周囲との関係 対上司関係 対同僚関係 end subgraph 多層的なスキル発達 独自の見立て .-> 技術の上達 対人的感度 .-> 技術の上達 end subgraph 対上司関係 上司による技術評価は不可能 end subgraph 対同僚関係 障害帰属の不寛容 高業績者の刺激 状態に応じた助言 end subgraph 独自の見立て 教科書への疑問 自己の長所短所の把握 体重と脂肪によるもみ分け end subgraph 対人的感度 快感度合いの観察 顧客話題への興味 後輩に教えることの難しさ end subgraph 技術の上達 ツボに入らない ==> 多様な部位の使用 & 可動性の回復 多様な部位の使用 ==> できる施術の確立 可動性の回復 ==> できる施術の確立 end ``` **図2.2 当事者ヘルスキーパーのスキル発達過程(当事者)**]([markdownテキストへのリンク](SFig2_2当事者ヘルスキーパーのスキル発達過程(当事者).md)) 図2.2 は、当事者ヘルスキーパーが自覚したスキルです。 この図のの1つ目のポイントは、スキルはバラバラではなく、「多層的なスキル発達」で見られるように、お互いに影響しながら発達するということです。 例えば、「独自の見立て」(熟練ヘルスキーパーが独自に行う見立て《概念的スキル》)と「対人的感度」(利用者の気持ちへの感度《対人的スキル》)が、「技術の上達」(技術的スキルの発達)に影響します。 2つ目は、スキル発達に影響する要因です。 当事者ヘルスキーパーの「職業観」と「周囲との関係」が、「多層的なスキル発達」に影響するのです。 ## 2.3 一般企業の事務系職種分析との比較 当事者ヘルスキーパーのスキル発達を一般企業事務職の当事者社員のものと比較すると、2つの違いがわかります。 1つ目は技術面です。 事務職に比べてヘルスキーパーは、3つのスキルがより密接に関連しながら発達しています。 また、ヘルスキーパーの上司は技術的スキルをほとんど指導できないこともわかります。 これらをお互いが理解することで、直接対決しないでスキルを開発することができるでしょう。 2つ目は動機づけ面です。 ヘルスキーパーは、制度的に管理職への昇格がなく仕事内容が長期的に不変なので、指名数競争や顔ぶれ固定化で、職場の雰囲気が悪化しやすい構造にあります。 組織による個別アセスメントとケアが必要でしょう。 ## 2.4 出展 - 竹下 浩(2020)視覚障害者の就労スキル発達過程の解明 ―ヘルスキーパーの事例分析―、日本応用教育心理学会第35回研究大会発表論文集、22-23