- [トップページへのリンク](https://www.cs.k.tsukuba-tech.ac.jp/labo/sekita/takeshita/training_alone/) - ファイルへのリンク - [オリジナルwordファイル](220412_一般_上司と部下.docx) - [このページのmarkdownファイル](i一般企業版230315.md) # 1. 視覚障害社員のスキル発達パターン(一般企業) ## 1.1 当事者社員から見たスキル発達 図1.1 は、一般企業における視覚障害当事者社員から見たスキルの発達過程です。 ```mermaid flowchart TD 仕事における困難発見 -.-> 周囲の当惑 & 就労力発達 & ストレス蓄積 周囲の当惑 ==> 周囲の低評価 & 周囲の支援力発達 就労力発達 -.-> 周囲の支援力発達 周囲の低評価 -.-> ストレス蓄積 subgraph 仕事における困難発見 見えづらい 手間と時間 状況把握が困難 図が使えない 情報ハンデ end subgraph 就労力発達 強みづくり 支援獲得方略 技術の発達 人間関係構築 end subgraph 周囲の支援力発達 支援環境づくり 問いかけ習慣 タスク試し end ``` **図1.1 当事者社員(一般企業)から見たスキル発達**([markdownテキストへのリンク](SFig1_1当事者社員から見たスキル発達.md)) 図1.1 の上部を見て下さい。 障害者前提の特例子会社とは異なり、一般企業の当事者社員は実に多種多様な 「**仕事における困難の発見**」が存在しています。 これが左側の矢印で「周囲の当惑」に影響し、そのままだと「周囲の低評価」に移行するリスク要因となっています。 「周囲の低評価」の結果、「ストレス蓄積」が進んでしまいます。 これは回避したいところです。 良い状態に移行する条件は、「**就労力発達**」です。 「仕事における困難の発見」は「就労力発達」にも影響し、それが「周囲の支援力発達」に影響します。 そして、「周囲の当惑」から「周囲の支援力発達」に移行します。 全体的な構造、要素間の関係が把握できましたか。 以下、具体的なイメージが湧くように、いくつか具体的な語りを紹介します。 まずは、最上部のカテゴリー「仕事における困難発見」に含まれる語りです。 - 図が使えない: パワーポイントは、全然。あの、見ることしかやってないです。スライドを文章にして。あのう、文字を読むんですけど。図は読まないです。そうですね。 図、なんか図に、なんか書いてあったりすると、細切れで読んだりはできるんですけど、図の並びがわからないので。 その下のカテゴリー「就労力発達」から、サブカテゴリー「強みづくり」と「支援獲得方略」に含まれる語りです。 - 聴取時の脳内整理と記憶: 全部耳から入って来る情報に頼っている部分が多いので、聴いてる中で自分の中で整理して、まとめたりとか、覚えておいて後でメモするとか。そういったことは得意なのかなあと思いますね。 - できないことと代替案の提示: (できないことを)見せないでやっているより、一発怒られてちょっと嫌な思いをした方が、まだ良いって思って。 (略)ただ、「できません」て言う時には、「どこまでができません」「だけど、どうしたらできます」とか「どこまでならできます」っていうことは、必ず申し添えるようにはしてます。 その下のカテゴリー「周囲の支援力発達」から、サブカテゴリー「問いかけ習慣」「タスク試し」に含まれる語りです。 - 抽象的思考の問いかけ: 物事の本質を見極めるのが、足りてなかった。その業務のポイントを見た時に、ミクロの視点で物事を見がちだった。(上司から)「それって結局、どういうこと?」みたいな本質のマクロ部分をしっかり考えるように言われるんですけど、なかなか自分の中でそれが身に付かない。「大きな視点で」っていうところに苦手意識もあって。 - できること探しと試し: 「これだったらできるかな?」みたいな、さっきの労働時間データとかですけど、振って下さって。ちょっと時間を頂いて作ったり、みたいな感じでしたね。 最後に、「仕事におけるの困難発見」と「周囲の低評価」から影響する「ストレス蓄積」に含まれる語りです。 - 晴眼者基準当然視のストレス: 会社に一番腹が立つのは、「晴眼者のやり方が正しくて、私のやり方が間違ってる」って。この切り口で持って来られるのが納得いかない。 ## 1.2 上司から見たスキル発達 次は、上司を見てみましょう。 図1.2 は、上司から見たスキルの発達過程です。 ここでは、薄ピンク色(RGB=fcf)で示されている概念「上司の雇用観」と「上司の当事者社員への能力観」は、当事者社員が観測できないことを表します。 ```mermaid flowchart TD 当事者社員の問題行動 -.-> 上司の雇用観 -.-> 上司の管理方略 -.-> 当事者社員のスキルの発揮 -.-> 上司の当事者社員への能力観 -.-> 上司の雇用観 当事者社員の強みの発揮 -.-> 上司の当事者社員への能力観 subgraph 上司の雇用観 style 上司の雇用観 fill:#fcf 正社員と同一視 ==> 上司の交代 正社員と同一視 ==> 契約の変更 end subgraph 上司の管理方略 指導と助言 環境配慮 end subgraph 当事者社員のスキルの発揮 PCスキル 社会的スキル 概念的処理スキル end subgraph 当事者社員の問題行動 引け目と反動 職場の厄介者 end subgraph 上司の当事者社員への能力観 style 上司の当事者社員への能力観 fill:#fcf end ``` **図1.2 上司(一般企業)から見たスキル発達**([markdownテキストへのリンク](SFig1_2上司(一般企業)から見たスキル発達.md)) 図1.2 の上部に、当事者社員の観測不能な「上司の雇用観(視覚障害者のスタッフを管理するとはどんなことか)」があります。 そこでは、一般企業なので「正社員と同一視」の段階から始まりますが、状況によっては「上司の交代」または「契約の変更」に移行する可能性があります。 「上司の雇用観」は「上司の管理方略」に影響を与えます。 「上司の管理方略」は「当事者社員のスキルの発揮」に影響を与えます。 「当事者社員のスキルの発揮」と「当事者社員の強みの発揮」は、当事者社員の観測不能な「上司の当事者社員への能力観」に影響を与えます。 そして、この能力観と、上司から見た「当事者社員の問題行動」は、「上司の雇用観」に影響を与えます。 循環的な関係ですね。 次に、各概念に関係する上司の語りを紹介します。 まず、図1.2 最上部の「当事者社員の問題行動」のうち「職場の厄介者」に含まれる語り「不適応と不調」です。 - 不適応と不調: 当事者社員は疎外感や葛藤を抱いてしまい、周囲も悩みが大きく、困っています。(略)そういう状況が続くと、周囲の社員全員が疲弊してしまいます。そして当事者社員も辞めてしまう。職場への思い込みもあるようです。 次に、「当事者社員の問題行動」と「上司の能力観」が影響を及ぼす「上司の雇用観」のうち、「正社員と同一視」に含まれる語り「公平な評価基準」です。 - 公平な評価基準: 会社は、そこはもう健常者と同じ土俵でしか見ない。やっぱり、他の人と比較をされての評価になるので。その評価の配慮は無いですね。もちろん障害に対する配慮はあっても、評価はフラット。 左側の「当事者社員の強みの発揮」に含まれる語り「聴覚で状況把握」です。 - 聴覚で状況把握: 場の雰囲気を読んだりとか、非常に得意ですね。仕事をやる上で「どこまでやるか」っていうレベルも、周りとの状況だったり置かれてる環境の変化を感じながらっていうセンスも持ってます。 最後に最下部にあるカテゴリー「上司の当事者社員への能力観」に含まれる語り「タスク可能性」と「全社的視点」を示す語りを紹介します。 - タスク可能性: 昨日、チームのミーティングがあったんですけれども、やっぱり、会場の設営とか、なんとかってのは‥できないんです。 - 全社的な視点: 全体を見る目というか。たまに自分の仕事にこだわりすぎたりとか‥やり方とかに。もっと高いとこから全体を見れると良いんだろうなあと思いますが。 ## 1.3 出典: - Takeshita, H. (2021), Career Development Process for the Visually Impaired Persons: Analysis by Company Type, Abstracts, 50th Anniversary Annual Conference, The Psychological Society of Ireland, S24. - 竹下 浩(2021), 事務系職種視覚障害者のスキルとタスクの開発:一般企業と特例子会社の比較分析, 日本教育心理学会 第63回総会発表論文集, PB103.