鶴見 昌代
企画/プロデューサー
Eyeself~ワタシノセカイ~企画・プロデューサーの鶴見です.
Eyeself~ワタシノセカイ~に興味をもっていただき,ありがとうございます!
この作品は弱視の学生が脚本・監督を担当し,弱視の世界を描いた作品です.
どうしてこのような珍しい形の作品を作ることができたのかというと,私や監督たちが所属する筑波技術大学という大学は,視覚障害者と聴覚障害者のための大学であって,さらに保健科学部は学生全員が視覚障害者なのです.
そういった環境だからこそ,この作品を作る機会が生まれました.
実は,私はほんの2年前まで映像制作に関わることになるとは全く想像していませんでした.
2年前に,マルチメディアとマルチメディア演習という授業を新しく担当することになりました.今まで担当したことがない授業で,ドキドキしながらでしたが,視覚障害者向けのマルチメディア関係の教材の準備などもしていました.
そうして,授業のガイダンスをしようとしたところ,主演でこの作品のモデルとなった八染さんから,「この授業で映像制作をするために,この大学に入学したんです!」と言われ,他の学生さんたちも映像制作をしたいということだったので,「この気持ちに応えなくてはならない」という思いになり,これが私の運命だと思い,計画を変更して,映像制作をすることになりました.
大学時代のサークルの先輩である藤重さんに相談したところ,専門知識提供をしていただけることになり,その後は,脚本指導,プロデュース,各種調整作業などなど,さまざまな専門的サポートをしていただいています.
その後,八染さんの書いた詩の力や,脚本・監督を担当した弱視学生さんたちの思いにこたえる形で,超一流のプロの方々が支援してくださることになり,作品が完成しました.
また,その後,日テレアックスオン様のご支援で,音声ガイドも制作されました.
この作品を作る過程は本当に大変でした.
でも,観ていただいた方から,いろいろなコメントをいただいて,本当に作ってよかったなと思いました.
見え方は一通りではなく,感じ方も一通りではありません.
この作品はあくまで一つの視点を描いた作品です.
でも,きっと一人ひとりの心に何かを残してくれると思います.
これからもご覧いただける機会を作れたらと思っています.
藤重 道治
脚本指導/クリエイティブディレクター/プロデューサー
「視界は普通の人の3%です。だから、ビルの隙間の青空も、私が見れば空一杯に広がります!
私は、この見え方を皆に自慢したいんです!」
虚勢を張っているのかと意地悪な僕は訝ったけど、違っていた。
大学時代の後輩から、弱視の学生達の映像制作を手伝って欲しいと声を掛けて貰い、難しそうで面白そうと駆け付けた筑波技術大学の教室で、満面笑みの女学生はそう自己紹介した。
52にもなって、初めて「視野狭窄」と言う言葉に出会い、そして参加学生達の見え方の多様さに驚かされた。
後輩兼先生からは「皆、料理動画を作りたいと言ってました」との事前情報だったが、
冒頭の女学生の情熱が3人の男子学生に飛び火し、彼女の世界に絞って、皆で知恵を出し合い作ろうと一致団結。
私はインタビュアーのように4人の胸の内を引き出すことに努めて、蝉の大合唱の中、全員の日常から人生観までをくるめた脚本が完成した。
その内容は、驚くほど女学生が数年前に自分の瞳を愛おしく綴った詩と共鳴していて、歌にして挿入しようと決まる。
学生達の初めての挑戦に、全分野の超一流スタッフが結集し、本作は完成した。
流転する現場を受けとめ続けた先生(兼後輩)を始め、誰一人欠けてもできなかった。
前例なき道を暗中模索で切り拓く怖さとそれを超える楽しさは、見えづらい世界を前に、止まらず進むのとどこか似ているのだろうか…その魅力を体感し、出会いに感謝した日々だった。
大学での披露会、一番乗りは女学生の母親だった。
見終えて、「ある日、目の障害は私の責任だから、ごめんねと謝った時、娘はこの目が大好きだよと返してくれたので気を遣わせてしまったと後悔していました。でも、それが本気だったと今日わかりました」と泣いていた。
4人の想い、大勢に届きますように!
岡村 良憲
カメラ/プロデューサー
僕は僕以外の方が撮影した作品を見た時に、何を考えて、何故そう撮影したのだろうかと良く考えるんです。
それぞれに個性があり、誰一人として同じ人はいなくて、本当に面白いんです。
なので、自分以外の人の見ている世界に興味がありました。
「Eyeself〜ワタシノセカイ〜」と言う今作品は、主人公である、八染まどかさんの一日を描いた短編映画です。
弱視(視野狭窄)を持つ彼女の目の見え方、それに伴った物事の考え方は、僕自身全く考えも及ばなかった世界でしたが、惹きつけられるものがあり、撮影に挑まさせていただきました。
ただ最初は、筑波技術大学の弱視の症状を持つ学生四人組が何かしらの映像を作りたいと、まだ内容も決まっていない状況でした。
興味があるので、手伝いに行かさせて下さい程度に思っていたのですが、蓋を開けてみたら中々の撮影内容(合成撮影や、雨降らし、プラネタリウムの真っ暗闇での撮影などなど…)で、これは優秀なスタッフを集めて、本腰入れて撮影しないと…となりました(笑)。
この場を借りて、今作に賛同し、参加してくれた全スタッフに感謝申し上げます。
撮影にあたり、八染さん達とのディスカッションは勿論、目の構造などを大学にて御教授いただいたりして、監督(学生四人組!)の皆んなが納得出来る映像にしていくプロセスは、本当に有意義なものでした。
彼女の世界を、カメラを通して表現すると言う作業は、撮影技師としても大変貴重な経験になり、ありがたく思っています。
そしてこの作品が、少しでも弱視と言う症状への理解に繋がればと願っています。
山木 隆一郎
主題歌作曲
作曲家、音楽プロデューサーの山木隆一郎です。
この話を最初にいただいた時、「これは自分の仕事だ」と思い、二つ返事でOKをしました。
と言うのも、父が視力障害者でしたので、子供の頃から、私の肩には父の手があり、どこに行くのも、何をするのにも、父の目となって様々な事をしてきました。また、
父は、栃木県、福岡県、埼玉県の視力障害センターなどで教師をしていたという事もあり、視力障害のある方々と接する機会も多く、非常に身近な事だったんです。
マネージャーにOKを出したあと、主演の八染さんの参考歌唱録音データと、今回の歌詞が届いたのですが、子供の頃から父に聞いていた、弱視の世界がそのままの世界観で、運命を感じたと言うと大袈裟かもしれませんが、私以外の誰が作るんだ。という気持ちでいっぱいでした。八染さんのストレートな歌声と透明感を活かすにはどうしたらいいか、どんな曲の方向がいいか、そんな事を考えながらピアノと向き合って作っていきました。
歌詞の世界観がしっかりしていると、メロディはどんどん浮かんでくるので、そう時間はかからずに一度出来上がったのですが、でも、もっと良い曲になるはず。
と考えて、新たにメロディを足し、八染さんに追加歌詞をお願いしたりもしました。
歌のレコーディングの日は、初めましてでいきなりのレコーディングだったのですが、緊張はしつつも終始楽しそうで、リラックスして良い歌が歌えたんじゃないかなと思います。レコーディング終わりで、かなり長い時間、皆さんといろいろな話をしたのですが、それぞれの熱い思いが聞けたので、レコーディング後は、この思いを、世界観を壊さないように、さらにもっともっと広げるように、天国の父にも届くようにアレンジをして、この「瞳愛 -toua-」を完成させました。
完成した映像を見て、素晴らしい映像と楽曲のリンク、いろいろな感情で涙しました。このショートムービー「Eyeself〜ワタシノセカイ〜」に関わらせていただいて幸せです。
どうもありがとうございました。
皆様の心にも、この曲が響いてくれたら嬉しいです。
MEGU
ジャイアントフラワー制作
この映画の中で、主人公の八染さんが花の中に入るシーンがあります。
そのシーンのジャイアントフラワー制作をしたPETAL Design MEGUです。
この映画の物語を知るまでは、私たちは「弱視/視野狭窄」という言葉は聞いたことがありましたが、実際の見え方については深く考えたことがありませんでした。
しかし、台本を読み返し、その世界を少し身近に感じ、八染さんの心の声を聞くことができたような気がしました。
「弱視の世界」を映像でリアルに表現するという大きな目標に向かって一生懸命取り組む学生、スタッフの皆さんの様子をお聞きし、その情熱と熱意に打たれ、私たちができることがあるならば、ぜひ参加させていただきたいと映画制作の一員に加わらせて頂きました。
八染さんは、花を見ると、自分が親指姫になって花の中に腰かけているイメージを脳内で楽しんでいるとおっしゃいました。私たちは、そのイメージを映像で具現化するため、安全性を考慮したデザインと素材選び、そして短い納期ではありましたが、その実現に向けて全力を尽くしました。
撮影当日、ジャイアントフラワーの中で八染さんの笑顔が咲いた瞬間の感動は、今でも私たちの心に深く刻まれています。そして、八染さんからいただいたメッセージ、「お花の中に入るというイメージと夢を実現してくださり、本当にありがとうございます。とても幸せで楽しい時間でした。
私が思い描いていた通りの映像を作ることができました」という言葉は、私たちにとって何よりも嬉しいものです。常に多くの方々の心に残る作品を制作することに全力を注いでいる私たちにとって、これ以上の喜びはありません。
この素晴らしい機会を与えていただき、心から感謝しています。本当にありがとうございました。