小林@筑波技大/福祉工学やら支援技術やら

投稿者: M.Kobayashi (1ページ目 (7ページ中))

ICC2025

アベイロ大学構内での集合写真

今年のICCはポルトガル・アベイロでした。コロナ前から計画されていて、2020年に実施される予定だったポルトガルのICCは、延長を重ねてコロナが明けた後もしばらく実施されずにいて、今年ようやく実現できたという感じです。引率した学生たちは2年生2名、昨年も参加した3年生2名です。

しかし本当に、毎日よく歩きました…

会場は、50年程度という比較的短い歴史の「若い」アベイロ大学でした。そして泊まっている大学の寄宿舎からメイン会場の会議場までは400mほど離れています。これはまぁよくあることなのです。しかしそこから食事をする学食まで更に650~700mほど寄宿舎とは逆方向に歩かなくてはならないのです。毎食1キロ歩く感じで、炎天下の中、毎日15000歩以上、多い時には2万歩以上歩くという10日間でした。

実施したワークショップに関しては、オンラインのプレミーティングにて「IT系を増やす」方向で事前に合意がなされていたため、例年実施している書道系のものと、DXRuby体験をするものの2つにしました。DXRubyに関しては、RubyのインストールからライブラリやDLLなどの環境構築も参加学生たちにやってもらうように構成してみました。事後にベルギーの参加者から「僕のMacでも構築できたよ!」とWhatsApp経由で動作している動画と共にメッセージが送られてきたのは嬉しかったです。

また、ボランティアスタッフの年齢が例年に比べてとても低いのも印象的でした。大学生もいたのですが、13歳、15歳、17歳などいわゆる「中高生」が活躍していたのです。彼ら・彼女らのモチベーションの高さと学力・行動力の高さには本当に驚かされました。高校生が極東の島国から来た大学生たちに対して、英語で地元の大学の案内を1人でするのです。どの建物が何学部で、どういうことを学んでいて..と流暢に話します。大学自体も地域に開かれていると感じました。

科学へジャンプ・サマーキャンプ2025

去る2025年7月19日土曜から21日月曜祝日にかけて、科学へジャンプ・サマーキャンプを実施しました。全国から集まった12名の中高生が参加してくれた同イベントは、2023年の前回同様、ホテル日航さんに宿泊してもらってバスで大学往復というプランでした。大きく進化した点として、NIMS(物質・材料研究機構)の石井真史さんにご協力頂き、NIMSでの化学ワークショップと研究室見学などが実現できたことが挙げられます。

NIMSでのワークショップは本当に素晴らしいものでした。まずリモネンで発泡スチロールが溶けることを筆でのお絵描きと触察で認識します。その後、紙コップに入れたリモネンに発泡スチロール容器を溶かしていき、割り箸の感触で液体になったことを認識します。最後にアルコールで再度スチロールを抽出し、その体積変化を触って確かめます。この体験の前に、石井さんの講義パートもあり、学ぶ要素もしっかりあります。中学生から高校生までそれぞれの知識に合わせて考えることができる楽しいワークショップでした。更に材料の熱伝導率の違いやペルチェ素子を用いた電気と熱の変換体験など、単に事象を楽しむことから、その仕組みを理解するレベルまで幅広い状況の生徒たちを上手に吸収する仕組みに溢れていました。

その他、協賛頂いたインテックさんによるAI体験、前回も実施した触形模型、ペットボトルを使った音の実験、卒業生によるアプリ体験&AIによる小説作成、加速キッチンさんによる宇宙線検出など、様々な科学体験をした12名は、2泊3日という短い期間でしたが、(多分)満足して帰っていった…と思います。

ご協力いただいた皆様、ありがとうございました。

情報システム学実験

3年生対象の学科のオムニバス授業のひとつに「情報システム学実験1・2」があります。5人の教員が3週ずつ担当し、1週あたり3コマという構成です。シラバス検索の科目名欄に「情報システム学実験1」と入れると当該授業の情報が出ます。私の担当は「ESP32とGPSユニットを使ったシステム作成」となっていますが、特にGPSが必須というわけではなく、2~3名のグループに分かれて自由にマイコンシステムを作るという授業になっています。この授業を5月下旬から6月上旬にかけて実施しました。

ブレッドボードにESP32と圧電ブザー、GPSユニット、マグネットセンサーがつながっています。

2018年入学生のカリキュラム改定時にスタートしたこの科目は、2020年が最初の年でした。私の担当会、最初はESP8266を使っていましたが途中からESP32にシフトしました。Bluetoothシリアルが使えるようになって学生が作るものの幅が広がった感じです。各グループに配るESP8266のピンヘッダの色を赤、青、黄、黒にしていたことから、グループ名は「チームレッド」「チームブルー」「チームイエロー」「チームブラック」と命名することにしています。今となっては何の色なのか学生も不思議に思っているかもしれません。

各グループで制作に励んでもらい、最後の時間にプレゼンテーションをして終わり、という授業形態なのですが、条件として「無線機能を使うこと」を指定しています。なにかしらのセンサーから得た値を離れたパソコンやスマホで確認するとか、その後のアクションをアクチュエータやモータで実行するとかそういうシステムを自由に作ってもらうのです。

今年は、以下の4つのシステムが作られました。

  • チームレッド:親指の位置に圧力センサを埋め込んだグローブを使って、マッサージの強さを無線で飛ばし、パソコンのプログラム側で「ちょうど良い強さ」を教えてくれるシステム=「Massage Master」フェルトを縫ってグローブを作ってくれていました。
  • チームブルー:傘が開いているかどうかをマグネットセンサで検知して、GPSのデータと共に「どこで傘が開かれているか」のデータを集めることで実際の雨の様子を集約・確認するシステム。実際には開閉センサの状態と、GPSの位置情報を送信して受信する、というものを実装してもらっています。
  • チームイエロー:Qrio Lockのようなスマホから開錠する電子錠。ESPを親機にして、スマホのブラウザから操作することでステッピングモータを回すようなものです。
  • チームブラック:椅子に設置した赤外線距離センサと、首のあたりにつけた加速度センサから「座っている姿勢の良し悪し」を検出してスマホに通知するシステム。ESPを2台使って相互通信し、1つをWebサーバにしてスマホと接続していました。

最後のプレゼンテーションの時間には、動画や実演などを交えた発表がなされました。ちょうど来学していた外部の研究者5名の方々にも参加して頂けたことで、学生たちにも刺激になったと思います。

上の写真はチームブルーのブレッドボード。マグネットセンサの状況をブザーで教えてくれつつ、GPSの緯度経度情報を発信します。

実はGPSユニットは毎回トライするグループは苦労します。新旧混ざった情報が溢れているうえ、窓際でもできなくはないのですがしっかり電波を補足するには屋外に出なくてはならず、そして屋外に出るとパソコンの画面が見えづらく、弱視学生には厳しい。通信系のソフトウェアはどこがうまく動いていないのか特定しにくいということを体験してもらうのも本実験の主旨のひとつなのですが、GPSを利用すると更にその不確定要素が増えるというわけです。

CHI2025

4月末から5月にかけて、CHI2025がパシフィコ横浜で開催されました。HCI最大規模の国際会議CHI、これまで全くご縁がなかったのですが、今回Accessibility Chairとして初参加しました。日本開催の魅力が大きかったのか、5000人以上の登録があり、史上最大参加人数ということでした。(5600人、とどなたかから聞いた気がします)

正直なところ参加費の捻出に少し苦労したところもあったのですが、コミッティーメンバーを始め、国内外の様々な方々と知り合いになることもでき、実りある経験となりました。Accessibilityに関しては他のChairの皆さんに任せっきりで申し訳ありませんでしたが、本当に勉強になりました。

一つ残念だったのは、このWebサイトのハンバーガーメニュー、アクセシブルではないんですね。iPhoneのVoiceOverでどうやってもフォーカスが当たりません。PCのブラウザでも、(普通の環境ですぐに試せます)幅を狭くするとTabキーで移動できなくなります。これでは音声ユーザにとって「下の階層に行けないサイト」になってしまいます。気づいた時点でWebチェアに報告したのですが、外注部分なので対応できないとのこと…CHI2024 のサイトでは大丈夫だっただけに不思議でした。一方、コメントしたのが活かされたのかどうか分かりませんがCHI2026のサイトでは直っていました。

評価ベース

Windowsの設定を「Win+i」で開き、「評価ベース」で検索すると「アプリとブラウザーコントロール」の下にある「評価ベースの保護」という設定項目が現れます。セキュリティ設定のひとつであるこの「評価ベースの保護」、イマイチ分かりにくい表現だと感じていましたが、そんなに頻繁に開くわけでもないのでスルーしていました。

しかし昨晩子供のマシンの面倒を見ている時に久々に遭遇したので、気になっていた「英語での表現」を調べてみたところ:

Reputation-Based Protection

でした。

MSの自動翻訳サイトだと「評価ベース」と「評判ベース」が混在していますね。「評価」だと主体が何なのか気になりますが「評判」だと何というか「一般社会」「民衆」的なイメージになるような気がします。

というわけで小さなモヤモヤが少しスッキリしました。

3月盲学校訪問など

3月に何校かお邪魔させて頂きました。

群馬県立盲さんでは、小学部の生徒さんを対象にバーコードワークショップ、高等部の生徒さんを対象にpythonの出前講座を実施させて頂きました。

小学生に楽しんでもらうということで、今回バーコードについては新たに教材を作り直しました。まずはいつものように「お菓子のバーコードをスキャン」して国番号や事業者番号などについて気づいてもらって説明します。いつもはPCを人数分持って行ったりするのですが、1台に3つのバーコードスキャナをつけて順番に操作してもらうことにしました。音声出力をするので、こちらの方が色々都合が良かったようです。

続いて、立体コピーでバーの数を数えて、ガードバーの存在や1つの数字が2本で構成されていることなどを学びます。そこから巨大立体コピーで7セグメントの構成であること、8桁の場合は右側が偶数パリティで左側が奇数パリティであることなどを伝えます。13桁が12桁で構成されていることや、右のパリティの組み合わせで13桁目が表されることなどは少し難しいので今回は省略。

最後にバーコードパズルです。ここの教材を新しくして、数字とバーパターンの対応が分かるようにしてみました。…が、もう少し改良の余地がありそうです。

一方の高等部の生徒さん対象のpythonでは、一通り「情報」の科目の方でプログラミングを学んだ生徒さんということで再帰のアルゴリズムを体験するものやライブラリのインストールとその利用の体験などをして頂きました。Webカメラを用いるサンプルを動かした時の楽しそうな様子にこちらも楽しくなってしまいました。

薬指

「薬指は英語で何て言うんだっけ」ある日の朝食時の話題です。Thumb, Index finger, Middle fingerと来て薬指や小指はあまり表現したことがない。小指はpinky ringと言うからpinkyか、おっとlittleも言うみたい、などと話していましたが、当の薬指はというとRing fingerが出てきました。うーんやっぱりそれ以外の表現はないのか~、という感想。

右手の場合もRight ring fingerと出て来ました。なんだか薬指と小指はあまり重要ではないような印象…?いやいや逆に重要なのか…?とか、朝から少し考えてしまいました。

剣道でも弓道でも、左手の薬指は結構重要なポジションだった記憶がありますが、西洋ではそうでもないんでしょうかね。しかしそもそも「薬指」という名称の由来もあまり考えたことがありませんでした。調べてみるとなるほど面白いです。洋の東西を問わず精神的には重要な?ポジションだったようです。

年始は奈良へ

久々に、かなり久々に奈良を訪れました。今回奈良女子大に訪れたついでに、戻る前に春日大社や東大寺にも足を伸ばしてみました。奈良の記憶には中学の修学旅行と大学時代のツーリングくらいでしょうか。東大寺周辺は本当に中学生以来かもしれません。

現地では、駅前から春日大社~東大寺まで歩いてみました。猿沢池の脇を通り、一の鳥居を抜けるともう周囲は「森」です。ふと顔を上げると鹿と目が合います。このエリアには結構な数の鹿が存在するのに、街中にまでは歩いて出てこないのが不思議です。でも奈良女のキャンパス内にも普通に置物のように数頭座っていたので、行き来?しているんでしょうか。それはそれで不思議な光景ですけど。

奈良公園は流石観光地、御多分に漏れず外国からの来訪者で溢れかえっていました。鹿の被り物も人気なようです。写真は春日大社と全長15mの大仏様。大仏の頭の長さは5mだそうです。実に1/3の大きさですが遠いので丁度良い威圧感になっている感じです。

春日大社本殿。
東大寺の大仏様を見上げる写真。

AIスーツケース

毎年12月に研究会でお台場産総研に来ているのですが、実は日本科学未来館のAIスーツケース、まだ見たことがありませんでした。そんな中、ようやく先週ハンガリー人の知人と行く機会があったので体験することができました。

この手の「盲導犬ロボ」的なものはもう何十年も前から研究ネタにされてきているわけですが、PCの小型化やセンサの高性能化、モーターの効率化など色々な技術的な発展があって実現されているというのが第一印象です。どーんと上に乗っかったLiDARと、予想より小型のPC筐体、そしてバッテリーが入れられたケースはもちろん荷物を入れるスペースはないのですが(笑)何より驚いたのは「使っていて目立たない」ことです。

AIスーツケースの中身。
真ん中にバッテリー、右側に制御用PC,左側にハブが見える。左下は制御用の別CPUだと思われる。センサもしくはモーター用?

博物館や科学館の中でスーツケース..というより大きさ的にはキャリーケース、を持って歩くというのは実際には奇妙です。しかし、「そういう人が歩いていて」も、それほど注目は集めません。体験中も、他の来館者にじろじろ見られることはありませんでした。ロボットや犬(もしくは猫?)といった外観ではなく、あえてキャリーケースにしたセンスに改めて感動した次第です。

関連してソフトウェア的に面白かったのは、人の集団が前に居て通路が狭くなっている時には進まないことです。ひたすら待ちます。これについては目立たないことが逆効果?で、多分「白杖を持っていたらすぐにどいてくれる方々」も、気づかず通路を塞ぎ続けてしまうわけでして、どちらが良いということではないのですが小さな発見でした。


ARマーカー技術検証実施中、の看板

また、ある展示スペースにはARマーカーが貼ってあったのですが、これは独自

サーバーを立てて、マーカーに対応した音声案内をスマホアプリで提示してくれるようなシステムとのことでした。残念ながら試験運用で、その日は稼働していなかったのですが、ARマーカーを使っている理由は「遠くから識別しやすいオープンプラットフォームだから」ということです。あえてQRコードにテキスト情報やURLを入れるというようなことをしないあたりが良いですね。QRコードだと近づけないと読み取れませんが、ARマーカーなら大丈夫そうです。

SIGACI@お台場-2024

12月に入り、恒例の福祉工学ウィーク。2024年12月4日 水曜日と翌5日 木曜日にかけて行われた、お台場産総研のSIGACI(WIT共催)に参加してきました。高齢者セッションの座長を務めつつ、幹事団の先生方などいつものメンバーと顔を合わせて情報交換。水曜のお昼はこれもいつものFood truckでカレーを買って、見晴らしの良いラウンジで食べました。

今年はいつも多くの学生さんの発表をして頂いている芝浦工大の米村先生がご退職ということで、最後にお花をお渡ししました。米村先生これまで本当に有難うございます。(そして当日ご賛同&ご協力頂いた先生方にも感謝です)


エスプレッソ・アメリカーノのカプチーノ。ハートのラテアート。

研究会とはあまり関係ないのですが、比較的早めに終わった初日、夕食前の時間調整のためにテレコムセンタービルのアリーナにあるエスプレッソ・アメリカーノに関係者数名で入りました。入るというより座る、が正しそうですが。ここは電源もあるのでちょっとしたワークスペースに使えます(し、実際夕方に入っているお客さんはほぼノートPC開いてました)。そしてなんとeduroamが入る…今まで全く知りませんでした。シナモンの効いたカフェラテも美味しく、ゆっくりお仕事できました。

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