小林@筑波技大/福祉工学やら支援技術やら

投稿者: M.Kobayashi (1ページ目 (7ページ中))

情報システム学実験

3年生対象の学科のオムニバス授業のひとつに「情報システム学実験1・2」があります。5人の教員が3週ずつ担当し、1週あたり3コマという構成です。シラバス検索の科目名欄に「情報システム学実験1」と入れると当該授業の情報が出ます。私の担当は「ESP32とGPSユニットを使ったシステム作成」となっていますが、特にGPSが必須というわけではなく、2~3名のグループに分かれて自由にマイコンシステムを作るという授業になっています。この授業を5月下旬から6月上旬にかけて実施しました。

ブレッドボードにESP32と圧電ブザー、GPSユニット、マグネットセンサーがつながっています。

2018年入学生のカリキュラム改定時にスタートしたこの科目は、2020年が最初の年でした。私の担当会、最初はESP8266を使っていましたが途中からESP32にシフトしました。Bluetoothシリアルが使えるようになって学生が作るものの幅が広がった感じです。各グループに配るESP8266のピンヘッダの色を赤、青、黄、黒にしていたことから、グループ名は「チームレッド」「チームブルー」「チームイエロー」「チームブラック」と命名することにしています。今となっては何の色なのか学生も不思議に思っているかもしれません。

各グループで制作に励んでもらい、最後の時間にプレゼンテーションをして終わり、という授業形態なのですが、条件として「無線機能を使うこと」を指定しています。なにかしらのセンサーから得た値を離れたパソコンやスマホで確認するとか、その後のアクションをアクチュエータやモータで実行するとかそういうシステムを自由に作ってもらうのです。

今年は、以下の4つのシステムが作られました。

  • チームレッド:親指の位置に圧力センサを埋め込んだグローブを使って、マッサージの強さを無線で飛ばし、パソコンのプログラム側で「ちょうど良い強さ」を教えてくれるシステム=「Massage Master」フェルトを縫ってグローブを作ってくれていました。
  • チームブルー:傘が開いているかどうかをマグネットセンサで検知して、GPSのデータと共に「どこで傘が開かれているか」のデータを集めることで実際の雨の様子を集約・確認するシステム。実際には開閉センサの状態と、GPSの位置情報を送信して受信する、というものを実装してもらっています。
  • チームイエロー:Qrio Lockのようなスマホから開錠する電子錠。ESPを親機にして、スマホのブラウザから操作することでステッピングモータを回すようなものです。
  • チームブラック:椅子に設置した赤外線距離センサと、首のあたりにつけた加速度センサから「座っている姿勢の良し悪し」を検出してスマホに通知するシステム。ESPを2台使って相互通信し、1つをWebサーバにしてスマホと接続していました。

最後のプレゼンテーションの時間には、動画や実演などを交えた発表がなされました。ちょうど来学していた外部の研究者5名の方々にも参加して頂けたことで、学生たちにも刺激になったと思います。

上の写真はチームブルーのブレッドボード。マグネットセンサの状況をブザーで教えてくれつつ、GPSの緯度経度情報を発信します。

実はGPSユニットは毎回トライするグループは苦労します。新旧混ざった情報が溢れているうえ、窓際でもできなくはないのですがしっかり電波を補足するには屋外に出なくてはならず、そして屋外に出るとパソコンの画面が見えづらく、弱視学生には厳しい。通信系のソフトウェアはどこがうまく動いていないのか特定しにくいということを体験してもらうのも本実験の主旨のひとつなのですが、GPSを利用すると更にその不確定要素が増えるというわけです。

CHI2025

4月末から5月にかけて、CHI2025がパシフィコ横浜で開催されました。HCI最大規模の国際会議CHI、これまで全くご縁がなかったのですが、今回Accessibility Chairとして初参加しました。日本開催の魅力が大きかったのか、5000人以上の登録があり、史上最大参加人数ということでした。(5600人、とどなたかから聞いた気がします)

正直なところ参加費の捻出に少し苦労したところもあったのですが、コミッティーメンバーを始め、国内外の様々な方々と知り合いになることもでき、実りある経験となりました。Accessibilityに関しては他のChairの皆さんに任せっきりで申し訳ありませんでしたが、本当に勉強になりました。

一つ残念だったのは、このWebサイトのハンバーガーメニュー、アクセシブルではないんですね。iPhoneのVoiceOverでどうやってもフォーカスが当たりません。PCのブラウザでも、(普通の環境ですぐに試せます)幅を狭くするとTabキーで移動できなくなります。これでは音声ユーザにとって「下の階層に行けないサイト」になってしまいます。気づいた時点でWebチェアに報告したのですが、外注部分なので対応できないとのこと…CHI2024 のサイトでは大丈夫だっただけに不思議でした。一方、コメントしたのが活かされたのかどうか分かりませんがCHI2026のサイトでは直っていました。

評価ベース

Windowsの設定を「Win+i」で開き、「評価ベース」で検索すると「アプリとブラウザーコントロール」の下にある「評価ベースの保護」という設定項目が現れます。セキュリティ設定のひとつであるこの「評価ベースの保護」、イマイチ分かりにくい表現だと感じていましたが、そんなに頻繁に開くわけでもないのでスルーしていました。

しかし昨晩子供のマシンの面倒を見ている時に久々に遭遇したので、気になっていた「英語での表現」を調べてみたところ:

Reputation-Based Protection

でした。

MSの自動翻訳サイトだと「評価ベース」と「評判ベース」が混在していますね。「評価」だと主体が何なのか気になりますが「評判」だと何というか「一般社会」「民衆」的なイメージになるような気がします。

というわけで小さなモヤモヤが少しスッキリしました。

3月盲学校訪問など

3月に何校かお邪魔させて頂きました。

群馬県立盲さんでは、小学部の生徒さんを対象にバーコードワークショップ、高等部の生徒さんを対象にpythonの出前講座を実施させて頂きました。

小学生に楽しんでもらうということで、今回バーコードについては新たに教材を作り直しました。まずはいつものように「お菓子のバーコードをスキャン」して国番号や事業者番号などについて気づいてもらって説明します。いつもはPCを人数分持って行ったりするのですが、1台に3つのバーコードスキャナをつけて順番に操作してもらうことにしました。音声出力をするので、こちらの方が色々都合が良かったようです。

続いて、立体コピーでバーの数を数えて、ガードバーの存在や1つの数字が2本で構成されていることなどを学びます。そこから巨大立体コピーで7セグメントの構成であること、8桁の場合は右側が偶数パリティで左側が奇数パリティであることなどを伝えます。13桁が12桁で構成されていることや、右のパリティの組み合わせで13桁目が表されることなどは少し難しいので今回は省略。

最後にバーコードパズルです。ここの教材を新しくして、数字とバーパターンの対応が分かるようにしてみました。…が、もう少し改良の余地がありそうです。

一方の高等部の生徒さん対象のpythonでは、一通り「情報」の科目の方でプログラミングを学んだ生徒さんということで再帰のアルゴリズムを体験するものやライブラリのインストールとその利用の体験などをして頂きました。Webカメラを用いるサンプルを動かした時の楽しそうな様子にこちらも楽しくなってしまいました。

薬指

「薬指は英語で何て言うんだっけ」ある日の朝食時の話題です。Thumb, Index finger, Middle fingerと来て薬指や小指はあまり表現したことがない。小指はpinky ringと言うからpinkyか、おっとlittleも言うみたい、などと話していましたが、当の薬指はというとRing fingerが出てきました。うーんやっぱりそれ以外の表現はないのか~、という感想。

右手の場合もRight ring fingerと出て来ました。なんだか薬指と小指はあまり重要ではないような印象…?いやいや逆に重要なのか…?とか、朝から少し考えてしまいました。

剣道でも弓道でも、左手の薬指は結構重要なポジションだった記憶がありますが、西洋ではそうでもないんでしょうかね。しかしそもそも「薬指」という名称の由来もあまり考えたことがありませんでした。調べてみるとなるほど面白いです。洋の東西を問わず精神的には重要な?ポジションだったようです。

年始は奈良へ

久々に、かなり久々に奈良を訪れました。今回奈良女子大に訪れたついでに、戻る前に春日大社や東大寺にも足を伸ばしてみました。奈良の記憶には中学の修学旅行と大学時代のツーリングくらいでしょうか。東大寺周辺は本当に中学生以来かもしれません。

現地では、駅前から春日大社~東大寺まで歩いてみました。猿沢池の脇を通り、一の鳥居を抜けるともう周囲は「森」です。ふと顔を上げると鹿と目が合います。このエリアには結構な数の鹿が存在するのに、街中にまでは歩いて出てこないのが不思議です。でも奈良女のキャンパス内にも普通に置物のように数頭座っていたので、行き来?しているんでしょうか。それはそれで不思議な光景ですけど。

奈良公園は流石観光地、御多分に漏れず外国からの来訪者で溢れかえっていました。鹿の被り物も人気なようです。写真は春日大社と全長15mの大仏様。大仏の頭の長さは5mだそうです。実に1/3の大きさですが遠いので丁度良い威圧感になっている感じです。

春日大社本殿。
東大寺の大仏様を見上げる写真。

AIスーツケース

毎年12月に研究会でお台場産総研に来ているのですが、実は日本科学未来館のAIスーツケース、まだ見たことがありませんでした。そんな中、ようやく先週ハンガリー人の知人と行く機会があったので体験することができました。

この手の「盲導犬ロボ」的なものはもう何十年も前から研究ネタにされてきているわけですが、PCの小型化やセンサの高性能化、モーターの効率化など色々な技術的な発展があって実現されているというのが第一印象です。どーんと上に乗っかったLiDARと、予想より小型のPC筐体、そしてバッテリーが入れられたケースはもちろん荷物を入れるスペースはないのですが(笑)何より驚いたのは「使っていて目立たない」ことです。

AIスーツケースの中身。
真ん中にバッテリー、右側に制御用PC,左側にハブが見える。左下は制御用の別CPUだと思われる。センサもしくはモーター用?

博物館や科学館の中でスーツケース..というより大きさ的にはキャリーケース、を持って歩くというのは実際には奇妙です。しかし、「そういう人が歩いていて」も、それほど注目は集めません。体験中も、他の来館者にじろじろ見られることはありませんでした。ロボットや犬(もしくは猫?)といった外観ではなく、あえてキャリーケースにしたセンスに改めて感動した次第です。

関連してソフトウェア的に面白かったのは、人の集団が前に居て通路が狭くなっている時には進まないことです。ひたすら待ちます。これについては目立たないことが逆効果?で、多分「白杖を持っていたらすぐにどいてくれる方々」も、気づかず通路を塞ぎ続けてしまうわけでして、どちらが良いということではないのですが小さな発見でした。


ARマーカー技術検証実施中、の看板

また、ある展示スペースにはARマーカーが貼ってあったのですが、これは独自

サーバーを立てて、マーカーに対応した音声案内をスマホアプリで提示してくれるようなシステムとのことでした。残念ながら試験運用で、その日は稼働していなかったのですが、ARマーカーを使っている理由は「遠くから識別しやすいオープンプラットフォームだから」ということです。あえてQRコードにテキスト情報やURLを入れるというようなことをしないあたりが良いですね。QRコードだと近づけないと読み取れませんが、ARマーカーなら大丈夫そうです。

SIGACI@お台場-2024

12月に入り、恒例の福祉工学ウィーク。2024年12月4日 水曜日と翌5日 木曜日にかけて行われた、お台場産総研のSIGACI(WIT共催)に参加してきました。高齢者セッションの座長を務めつつ、幹事団の先生方などいつものメンバーと顔を合わせて情報交換。水曜のお昼はこれもいつものFood truckでカレーを買って、見晴らしの良いラウンジで食べました。

今年はいつも多くの学生さんの発表をして頂いている芝浦工大の米村先生がご退職ということで、最後にお花をお渡ししました。米村先生これまで本当に有難うございます。(そして当日ご賛同&ご協力頂いた先生方にも感謝です)


エスプレッソ・アメリカーノのカプチーノ。ハートのラテアート。

研究会とはあまり関係ないのですが、比較的早めに終わった初日、夕食前の時間調整のためにテレコムセンタービルのアリーナにあるエスプレッソ・アメリカーノに関係者数名で入りました。入るというより座る、が正しそうですが。ここは電源もあるのでちょっとしたワークスペースに使えます(し、実際夕方に入っているお客さんはほぼノートPC開いてました)。そしてなんとeduroamが入る…今まで全く知りませんでした。シナモンの効いたカフェラテも美味しく、ゆっくりお仕事できました。

科学へジャンプ・イン東京2024

2024年12月1日 日曜日。富山から戻って翌日、科学へジャンプの地域版「イン東京」に参加してきました。昨年は十八番?の「バーコードワークショップ」をやらせて頂きましたが、今年は物質・材料研究機構の石井先生が行なうワークショップのお手伝いです。

テーマはQRコード。その仕組みを全部理解するのはかなり難しい対象ですが、「どれくらい汚されたら読めなくなるのか」を実験する内容でした。まず用意された15㎝四方の立体コピー版QRコードを使って、その形状や位置決めコードなどについて観察・触察します。このQRコードは金属の板にネオジム磁石で貼り付けられています。そしてPCを起動して、バーコードスキャナで読み込み中身を確認します。

次にその立体QRコード上に1cm角や1×2cmの磁石の板を置いて「汚して」行きます。ここで「まとまった領域を隠す場合、かなり耐性がある」とか、「縦方向や横方向など決まった向きに汚しても耐性が高い」などを試して実感してもらいます。途中、読み取り用のレーザーの性質を説明するためにパラメトリックスピーカーを使った反射の実験なども交えながら、位置決めコード(マーカー)のひとつを縦横斜めに読み取れなくすると少ない汚れでも読めなくなることなどを試します。

事前にメールや対面で石井先生と何度かやりとりさせて頂き、準備した本ワークショップ、参加してくれた生徒さんたちの積極性にも助けられて大変盛り上がりました。

黒部市吉田科学館特別展

2004年11月30日 土曜日、雨の富山に出向いて黒部市吉田科学館の特別展「さわる宇宙展」を訪れ、嶺重先生の講演会に参加してきました。当日少し早く着いたのでプラネタリウムも堪能することに。ドラえもんの「宇宙の模型」を鑑賞したのですが、なかなかよく出来ていて、全天周を上手に使ったコンテンツでした。

吉田科学館外観。曇り空。

特別展では主に学芸員の野寺さんが作成された3Dモデルが展示されていました。ロケットや惑星などが並ぶ中、なかなか興味深かったのは「リンゴの重さを比較して、太陽系の惑星の重力を感じる」という展示です。同じ大きさのリンゴの模型が並べられていたのですが、重さのコントロールは単純に密度を変えただけという話が面白かったです。「普通に充填して作ってみたら300グラムくらいになったので、それを基準にして単純にパーセンテージで指定した」ということで、厳密には表面の分とか誤差は出ますが、ほぼ希望通りの重さになったということでした。

嶺重先生のお話のテーマは「ブラックホール」でした。大々的にニュースになった「ブラックホールの画像」を触知できるようにした模型が配られ、参加者へのお土産になっていました。会場には小学生が多かったこともあり、できるだけかみ砕いた説明でしたが、嶺重先生の研究生活半生のご説明の方が興味深かったという印象…(笑)。個人的には「アメリカの肉は硬かった」というフレーズが一番記憶に残っています(失礼)。

二球式プラネタリウム投影機の3Dプリンタ模型。紫色の本体。

3Dモデルに話を戻すと、プラネタリウムの「二球式プラネタリウム(投影機)」のモデルが一番楽しめました。やはり動く/動かせるものが3Dプリンタには向いているんでしょうか。隣に「古いプラネタリウム操作盤」が置いてあったのも良かったです。野寺さんによる「このつまみをひねるとココが動くんです」という説明が、模型なくしては活きてこないので、そういう意味でも「今日イチのコンテンツだ!」と感じた次第。まぁ工学屋が興味をもつネタだったこともありますが、学科の学生を連れて行っても、両方触れるので楽しいのではないかなー、と思いました。


さて、富山といえば海産物。「海老・蟹・蛸・烏賊・貝・鯖」アレルギーの自分としては結構ハードルの高い土地なのですが、せっかくなので「食べられる海産」を食べて帰りたい。魚卵や鯖以外なら食べられるので、お食事処の店頭メニューを見てみるのですが、「蟹いくら丼」「白海老マグロ丼」など私にとって「余計な一品」がついてきます…「フツーのいくら丼にして欲しい…」と呟きながら、テイクアウト系にすべく「ますのすし」を頂きました。

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