小林@筑波技大/福祉工学やら支援技術やら

カテゴリー: 学会関連

PDFのアクセシビリティ

しばらくコロナで開催されていなかった3月のWIT/AAC@筑波技大。久々に参加してきました。論文作成・発表アクセシビリティガイドラインが新しくなったということで特別企画的な講演があって、布川先生・若月先生・宮城先生などの発表を直接聞く機会に恵まれました。(苅田先生はオンラインでした)

しかしついつい気になるのがPDFのアクセシビリティ。代替テキストを実際に皆さん入れているのかどうなのか。アクセシビリティチェックをしているのか。実のところ私も日ごろ作成するPDFはかなり手を抜いてしまっています。スイマセン。予稿集の原稿などには多少気を使っているのですが、最後に代替テキストを入れ忘れて提出してしまうこともあったりします。

というのも、Wordのアクセシビリティ機能で代替テキストを図に入れても、PDFにした時点で文字化けしてしまったり、全部消えたりしてしまうのですね。結局、何か変更があってPDFにする度に「全部の図の代替テキストをAcrobat Proで入れなおす」という作業が発生してしまいます。そしてこれがかなり面倒なのです。このあたり、うまく回避する術をご存知の方に教えて頂きたいです。

DEIMS2024

少し前になりますが、1セッションだけ座長を依頼されたDEIMSに参加してきました。DEIMSは理数系のアクセシビリティを扱う会議で、科学へジャンプでもお世話になっている鈴木昌和先生や山口雄仁先生たちが主催しているものになります。

DEIMSは、主に視覚障害者のための理数系トピックを扱う研究者たちが一同に会する貴重な機会でもあります。PDFアクセシビリティに関する発表なども興味深かったのですが、数式はやはりTeX表現を使うとか、8点点字による表現とか、色々と情報を得ることができたのが収穫でした。

振り返って日本の状況を考えてみると、多分、中高における数学教育では盲学校さん・視覚特別支援学校さんも含めあまり積極的にコンピュータを使うことがないのではと思います(各生徒個人のコンピュータ環境という意味で)。紙と鉛筆、点字での学習はとても大事ですが、大学に入学して初めてコンピュータで数学教材に触れるとなると、TeXの表現は馴染みがないと思われます。悩ましいところです。

以前、フーリエ変換の教材用ページの数式部分を、TeXで書いていたところ、学生さんに聞いてみると分かりにくいというフィードバックがありました。そこで結局、数式は画像配置にしてAltタグで細かく説明するという方法に変えました。日本語は2バイトコードで「√」「Σ」「∫」などがあり、それなりにスクリーンリーダーでも読みます。晴眼の教員と全盲の学生さんとの間でテキストデータを用いた共通理解がしやすい環境であるともいえます。反面、より高度な数式を扱ったり、学生さん自身が書くという面からはTeXの習得が必須でしょう。高校生が全員数学者を目指すわけではないので(どちらかというととても少数派でしょう)バランスが難しいですね。

さて、DEIMSでは会議終了後、Short Tokyo Tourということで神田明神や明治神宮を歩いて回りました。実は明治神宮に入るのは初めて(多分)で、英語で説明するために色々その場で調べてこれまた勉強になりました…

2023年12月振り返り…

前を向いて行こうと思いつつ、ついつい振り返ってしまいます。

ダーツ実験

12月、倫理審査を通過させて頂いた「(日本語と英語を)しゃべるダーツ」の実験もようやく進められて少し安心しました。頑張って実施してくれた学生さん、参加して下さった皆さん、お手伝い頂いたDeborah先生有難う御座いました。

しゃべるダーツ、イベントに出展すると必ず「全盲の方はどうやって狙うのか」と聞かれていたのですが、ひとまず軽く棒でタップして方向を確認する方法などを試してみています。そして(私自身も)意外だったのですが、少しの練習で皆さん「刺さる」ようになりました。これには本当に驚かされました。

バーコードワークショップ

12月初旬には「科学へジャンプ・イン東京」でバーコードワークショップを実施させてもらいました。貴重な機会を頂きありがとうございました。

そして今回、バーコードの組み合わせを試行錯誤する触覚教材を新たに作ってみました。立体コピーで作った7つの枠に、長方形の磁石で作った異なる幅の「バー」をはめ込む教材です。これを使って:

  • 黒で始まり白で終わる
  • 全体の黒の幅の合計は偶数(1+1、2+2、3+1、1+3)
  • 黒2本で構成されなくてはならない

という条件で組み合わせを考えると10通りできますよ~、ということを理解してもらう仕組みです。

与えられた時間に対して少し内容を欲張ってしまって最後駆け足になってしまいましたが、なんとかこなすことができました。また、参加はできなかったのですが12月中旬の地域版フォーラムにてビデオ報告をさせてもらいました。バーコードワークショップは自分のお気に入りのレパートリーなのですが、改めてまとめる機会を頂けたのは良かったです。

ICCHPじわじわ/CHI’25キックオフ

次回General Chairを担当するICCHPの打ち合わせや、少し先ですがAccessibility担当のCHI2025のキックオフミーティングなどがあり、いつものように英語に苦労しています。努力するしかないのですが、なんとかなりませんかね…

2024: New year’s resolution

早いもので、もうあと数時間で2023年も終わりです。来年は更に雑用や学外仕事が増えると思いますが「計画的&健康的」な生活を心掛けたいと思います。

2023年秋振り返りその2

長くなってしまった秋の振り返りその2です。11月編。

サイトワールドにしゃべるダーツを展示

卒研生&Deborah先生と進めている音声化されたダーツ盤を、サイトワールドの本学ブースで11月1日と2日に展示してもらいました。残念ながら私は現地に行けなかったのですが、Deborah先生や学科の先生方にご対応頂いたおかげで来場者の皆さんにも興味を持ってもらえたようです。触れて頂いた方々、手間をかけて頂いた先生方、ありがとうございました。

筑波大の講演会イベントに参加

11月4日 土曜日、お隣筑波大学の雙峰祭にて「ChatGPT時代の就職、仕事、働き方」という講演会イベントに参加しました。クラウドワークスの吉田社長や人工知能科学センター長の櫻井先生のお話を間近で聞くことができ、とても勉強になりました。私からは本学科の卒業生の就職先実例やどのような環境で仕事をこなしているのかなどについて話しました。

土浦花火大会

同日の夜は土浦の花火大会でした。この花火大会は競技会なので様々な花火業者が競演します。せっかくの機会ということで自転車でDeborah先生と近くまで見に行ったのですが、どうやらカナダ的には「鳥とかWild aminalは驚いたりしないのか」の方が気になるようでした。そんなこと考えたこともなかったので少し反省です。後で知人から聞いたところによるとカナダでは「Fireworksがある!」と聞いて駆けつけてみると数発で終わってしまって日本人としてはかなり物足りないことがあるそうです。

そして今年は1発、空に上がらず落ちてきてしまい、地上で炸裂した事故がありました。「また中止か?」と心配しましたが、無事再開されて良かったです。

都内の私立中学生たちの見学対応

11月17日 金曜日、推薦入試の前日に都内の私立中学からの見学対応をしました。視覚障害者用の支援機器や触覚教材の体験などをしてもらいましたが、点字打刻の体験では短い説明にも関わらずきちんと裏点を理解して、自分の名前や部活についてなど、点字用紙に点筆で打つことを楽しんでいました。中学生の吸収力に感動しました。

東北大でDeborah先生の講演会を実施

ヒューマンインタフェース学会の国際交流企画という形で、Deborah先生のハイブリッド講演会が実現できました。現地参加は理事会メンバーがメインでしたが、東北大の学生さんも参加してくれて良い講演会になったと思います。

プログラミング概論でハノイの塔

この時期プログラミング概論では再帰関数の利用例として「ハノイの塔」を学びます。理解を助けるために3Dプリンタで模型を作って学生たちに渡すのですが、今年の1年生は人数が多いため前週からコツコツ作りためておきました。1セットだいたい1時間半くらいで出力するのですが、連続しては出せないので結構手間はかかります。レジンでの出力バージョンも作ってみましたがやはりFDMの方が手軽ですね。

つくば市観光基本計画の会議に参加

今年度、つくば市の観光基本計画の策定委員を務めています。11月末に第二回の会議がありました。観光課の方々が用意してくださる資料、筑波山周辺の駐車場データやホテル宿泊者の属性データなど、純粋に興味深いものが色々出てきて、勉強させて頂いています。

SIGACI@京都-2023

3月27日の月曜日、昨年もポストしました京都工芸繊維大学でのSIGACIに参加してきました。今回は嬉しい悲鳴で発表件数がとても多かったため、急遽「ポスターセッション」を用意し、希望者にはそちらに変更してもらうという形をとりました。少なくとも私の知る限りアクセシブル・インタフェース研究会としては「初のポスターセッション」だと思います。

口頭発表セッションの様子

プログラムにも書いてあるように当日は「3分ショートプレゼン」を連続して行ってからポスターセッションの時間になるというスタイルでした。ノービス扱いの学生さんたちの発表が多くシフトしてくれたのですが、結果としてとても良い試みだったかと思います。来年度もこの形式にしてみるのが良いかも、と田中先生や桑原先生・河野先生・山添先生ら幹事メンバーと話していました。

また、ハイブリッドでの開催だったので「オンラインポスター発表」が数件ありました。ブレイクアウトルームに発表者が入った状態のノートパソコンをポスター前に置いて対応したのですが、会場に居る人たちが「中腰にならなくてはいけない」のが辛そうでした。次回はノートパソコンスタンドを用意しなくてはですね…


研究会とは離れて「京都」を見てみると、かなりコロナ前に戻ってきた印象です。旅行支援もあるのでしょうが、国内はもとより海外からの観光客数が昨年とは比べ物にならないくらいでした。新幹線もほぼ満席。個人的には「ココイチに外国人観光客の方々が行列を作る」という状況が印象的でした。

DCC優秀賞

すこし前の話題ではありますが、1月23~24日に開催された情報処理学会デジタルコンテンツクリエーション(DCC)研究会で、協力していた多摩美の学生さんの発表がDCC優秀賞を受賞しました。

視覚障害児童向けの楽しいインタラクティブデザイン」というタイトルの発表ですが、研究の目的は視覚障害者の美術教育です。内容は、柔らかい触感で構成されたブロックを組み合わせて形を作り、画像認識によってコンピュータが音楽を流すというインタラクティブシステムについてのものです。

関係する皆様には何度かつくばまで足を運んで頂いて、ディスカッションさせてもらいました。ソフトウェアを専門に学んでいるわけではない美大の院生さんが普通にOpenCVやpython、Yoloなどを使って作品を作り上げていく様子が、実は一番驚きでした。

「国内の視覚障害者31万人」

昔から工学系の視覚障害者支援に関する文献を読んでいると目にする「国内の視覚障害者は約31万人~」というフレーズ。厚労省統計(身体障害児・者実態調査)をリファーしつつ「はじめに」などで触れるわけですが、自分もそうしていた記憶があります。

平成13年、18年と5年毎に行われるこの調査、平成23年からは「生活のしづらさなどに関する調査」という名称になりました。平成28年の次は令和3年の予定でしたが、コロナのせいで延期になって今年実施されているのですね。知りませんでした。気になる調査結果は当然ながら厚労省のページで公開されています。

さて、この「視覚障害者数~」について、ここで書いておきたいことは、その「年齢構成」です。分かっている人は今更何を、とおっしゃられると思います。しかし、あまり意識せずにシンポジウム予稿やら研究会予稿やら書いている学生さんがいるような気がします。発表会場で学生さんたちに聞いてみると「知りませんでした」という声が多いです。確認するのは簡単で、上記ホームページからダウンロードできるPDF、9ページに「第6表 身体障害者手帳所持者数、年齢階級別(年次推移)」があるのでそれを見るだけです。視覚障害の行を取り出してみますと:

総数0-910-1718-1920-2930-3940-4950-5960-6465-6970-不詳
3121488182925401755
視覚障害の手帳所持者数(千人)

…とこんな感じです。単位は千人なので、総数は31万2千人、確かに約31万人です。そして、65歳以上で21万5千人、ほぼ2/3を占めることも分かります。もちろん若年層も存在していますし、福祉工学の意義として、困っていらっしゃる人たちを支援するという立場に絶対数は関係してこないこともあります。しかし、全体的な傾向を知っているかいないかによって「国内の視覚障害者は約31万人おり~」と書いたり言ったりする時のニュアンスが異なってくると思うのです。自分も若い頃はあまり気にしていなかったので、今の学生さんたちには是非、こういった数字の出どころと、そのソースから読み取ることのできる内容について、よく考えて欲しいなぁ、と思っています。

同様のフレーズに「視覚は8割」があったりしますが、こちらについては先日本学を退職された加藤先生が書いたテクノレポートが人気なようです。
http://altmetrics.ceek.jp/article/hdl.handle.net/10460/1607

3年ぶり、お台場SIGACI対面開催

7日水曜・8日木曜にHI学会アクセシブル・インタフェース研究会(SIGACI)の恒例12月イベントが、3年ぶりの対面ベースのハイブリッドで開催されました。2020年のコロナ直撃の後、「まぁ冬には収まるだろう」などと高を括っていましたが、バタバタとオンラインの波に飲まれて行き、2020年12月、2021年3月・12月とオンライン開催が続くことに…。

そしてようやく今年3月にハイブリッドでの実施、そして12月の研究会もなんとか無事に対面ベースで行うことができました。コロナの中、委員長をバトンタッチさせて頂いた工学院の田中先生、連催WITの産総研・細野様、情報保障担当の本学河野先生、Web担当の兵庫県立大・山添先生、いつも会場手配頂く産総研・関様、関係者の皆様ありがとうございました。

写真は会場の産総研臨海副都心センター11階からの景色。3年前と変わらずフジテレビ・レインボーブリッジ・東京タワー、そしてユニコーンガンダムという組み合わせが一望できます。

更に何より驚いたのは、日本科学未来館側の道路で毎回お世話になっていたカレーのキッチンカー(フードトラック)がまだ来ていたこと。「カレーのお鍋の上で小銭のやりとりをする」というスリルを、今年も味わうことができました。

SIGACIワークショップ

今年もヒューマンインタフェースシンポジウムで研究会ワークショップを実施することにしました。現在サポートページを本サイトに作っているところです。

SIGACIのワークショップは、2015年のはこだて未来大学のシンポジウムから毎年行ってきています。せっかく学会に参加しても他大学の学生さんたちと交流できないのはもったいないなぁ、という思いから学生交流を目的として続けていますが、2016年からしばらくはハードウェア工作ネタにシフトしました。

スタート当初は「ハードウェアにちょっと手を出してみるワークショップ」ということで加速度センサを使ったワークショップ。岡山県立大の石井先生のところの学生さんや新潟大の渡辺先生のところの学生さんたちが参加してくださいました。学生さんたちによってワイヤの使い方が異なり、性格が出ていたのを思い出します。

2017年、大坂工業大学の時は「ハードウェアにもっと手を出してみるワークショップ」。ESP8266とスマホの通信をやりました。かなりお土産としては良いモノだと思っていたものの、当日まで参加者が集まらずに大会長まで参加してもらったりしました。

2018年、筑波大でのシンポジウムは幹事も担当しつつ、ワークショップも頑張って続けました。「ハードウェアと戯れるワークショップ」というタイトルで、スピーカーを接続したArduinoでシンセサイザーみたいなものを作ったように記憶しています。近場ということで、本学の学生にも参加してもらった回でした。

2019年の同志社開催シンポでは、ワークショップではなく講習会「ハードウェアスケッチ」の方にジョイント参加させてもらいました。小林茂先生の講習会で、ネットワーク上でのスケッチなど体験させて頂きました。

コロナ直撃の2020年はシンポジウムではなく「コロキウム」という形での開催でした。ワークショップはZoomでの開催となりハードウェアネタではありませんでしたが、色々な方をお招きして良いお話が聞けました。

昨年2021年は工学院の田中先生に音頭を取ってもらって、オンラインの「研究室見学」を実施しました。学生さんたちのレポートが、現場感があってよかったです。

というわけでしばらくぶりのハードウェアワークショップ。無事実現できることを願っております。

SIGACI@京都

にしんそば

先週、2年前まで委員長を務めていたヒューマンインタフェース学会のアクセシブル・インタフェース専門研究委員会(SIGACI)主催の第188回研究会に参加してきました。

例年3月に京都で、12月にお台場で開催されている同研究会ですが、2020年3月にコロナ直撃を受け「開催中止」になりました。そこからはオンライン続きだったため、今回はなんとか対面で実施しようと動いていたのです。しかし京都市のまん延防止などが影響し、最終的にはオンライン発表も含むハイブリッドで開催することに。

さらに聴講者からの要望で手話通訳の情報保障が入ったり、当日発表者が参加できないために録画での発表も行うなど盛りだくさんで、「{対面発表|オンライン発表|録画発表}+手話通訳」の多岐にわたる形態での研究会となりました。

結局のところハイブリッドは「オンラインも対面も」やらなくてはいけないので、便利な反面、受付や参加費支払なども労力が倍になって現地の先生方はタイヘンだなぁ~という印象。ポストコロナにおける研究会の一形態になると思われますが、自分で運営するとなると、慣れるまで経験を積む必要がありそうです。

写真は3年ぶりくらいの「にしんそば」。他ではあまり食べられない(と思うので、京都に来るとなんとなく頼んでしまいます。