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小林@筑波技大/福祉工学やら支援技術やら

薬指

「薬指は英語で何て言うんだっけ」ある日の朝食時の話題です。Thumb, Index finger, Middle fingerと来て薬指や小指はあまり表現したことがない。小指はpinky ringと言うからpinkyか、おっとlittleも言うみたい、などと話していましたが、当の薬指はというとRing fingerが出てきました。うーんやっぱりそれ以外の表現はないのか~、という感想。

右手の場合もRight ring fingerと出て来ました。なんだか薬指と小指はあまり重要ではないような印象…?いやいや逆に重要なのか…?とか、朝から少し考えてしまいました。

剣道でも弓道でも、左手の薬指は結構重要なポジションだった記憶がありますが、西洋ではそうでもないんでしょうかね。しかしそもそも「薬指」という名称の由来もあまり考えたことがありませんでした。調べてみるとなるほど面白いです。洋の東西を問わず精神的には重要な?ポジションだったようです。

年始は奈良へ

久々に、かなり久々に奈良を訪れました。今回奈良女子大に訪れたついでに春日大社や東大寺にも足を伸ばしてみましたが、奈良の記憶には中学の修学旅行と大学時代のツーリングくらいでしょうか。東大寺周辺は本当に中学生以来かもしれません。

現地では、駅前から春日大社~東大寺まで数時間かけて歩いてみました。猿沢池の脇を通り、一の鳥居を抜けるともう周囲は「森」です。ふと顔を上げると鹿と目が合います。このエリアには結構な数の鹿が存在するのに、街中にまでは歩いて出てこないのが不思議です。でも奈良女のキャンパス内にも普通に置物のように数頭座っていたので、行き来?しているんでしょうか。それはそれで不思議な光景ですけど。

奈良公園は流石観光地、御多分に漏れず外国からの来訪者で溢れかえっていました。鹿の被り物も人気なようです。写真は春日大社と全長15mの大仏様。大仏の頭の長さは5mだそうです。実に1/3の大きさですが遠いので丁度良い威圧感になっている感じです。

春日大社本殿。
東大寺の大仏様を見上げる写真。

AIスーツケース

毎年12月に研究会でお台場産総研に来ているのですが、実は日本科学未来館のAIスーツケース、まだ見たことがありませんでした。そんな中、ようやく先週ハンガリー人の知人と行く機会があったので体験することができました。

この手の「盲導犬ロボ」的なものはもう何十年も前から研究ネタにされてきているわけですが、PCの小型化やセンサの高性能化、モーターの効率化など色々な技術的な発展があって実現されているというのが第一印象です。どーんと上に乗っかったLiDARと、予想より小型のPC筐体、そしてバッテリーが入れられたケースはもちろん荷物を入れるスペースはないのですが(笑)何より驚いたのは「使っていて目立たない」ことです。

AIスーツケースの中身。
真ん中にバッテリー、右側に制御用PC,左側にハブが見える。左下は制御用の別CPUだと思われる。センサもしくはモーター用?

博物館や科学館の中でスーツケース..というより大きさ的にはキャリーケース、を持って歩くというのは実際には奇妙です。しかし、「そういう人が歩いていて」も、それほど注目は集めません。体験中も、他の来館者にじろじろ見られることはありませんでした。ロボットや犬(もしくは猫?)といった外観ではなく、あえてキャリーケースにしたセンスに改めて感動した次第です。

関連してソフトウェア的に面白かったのは、人の集団が前に居て通路が狭くなっている時には進まないことです。ひたすら待ちます。これについては目立たないことが逆効果?で、多分「白杖を持っていたらすぐにどいてくれる方々」も、気づかず通路を塞ぎ続けてしまうわけでして、どちらが良いということではないのですが小さな発見でした。


ARマーカー技術検証実施中、の看板

また、ある展示スペースにはARマーカーが貼ってあったのですが、これは独自

サーバーを立てて、マーカーに対応した音声案内をスマホアプリで提示してくれるようなシステムとのことでした。残念ながら試験運用で、その日は稼働していなかったのですが、ARマーカーを使っている理由は「遠くから識別しやすいオープンプラットフォームだから」ということです。あえてQRコードにテキスト情報やURLを入れるというようなことをしないあたりが良いですね。QRコードだと近づけないと読み取れませんが、ARマーカーなら大丈夫そうです。

SIGACI@お台場-2024

12月に入り、恒例の福祉工学ウィーク。2024年12月4日 水曜日と翌5日 木曜日にかけて行われた、お台場産総研のSIGACI(WIT共催)に参加してきました。高齢者セッションの座長を務めつつ、幹事団の先生方などいつものメンバーと顔を合わせて情報交換。水曜のお昼はこれもいつものFood truckでカレーを買って、見晴らしの良いラウンジで食べました。

今年はいつも多くの学生さんの発表をして頂いている芝浦工大の米村先生がご退職ということで、最後にお花をお渡ししました。米村先生これまで本当に有難うございます。(そして当日ご賛同&ご協力頂いた先生方にも感謝です)


エスプレッソ・アメリカーノのカプチーノ。ハートのラテアート。

研究会とはあまり関係ないのですが、比較的早めに終わった初日、夕食前の時間調整のためにテレコムセンタービルのアリーナにあるエスプレッソ・アメリカーノに関係者数名で入りました。入るというより座る、が正しそうですが。ここは電源もあるのでちょっとしたワークスペースに使えます(し、実際夕方に入っているお客さんはほぼノートPC開いてました)。そしてなんとeduroamが入る…今まで全く知りませんでした。シナモンの効いたカフェラテも美味しく、ゆっくりお仕事できました。

科学へジャンプ・イン東京2024

2024年12月1日 日曜日。富山から戻って翌日、科学へジャンプの地域版「イン東京」に参加してきました。昨年は十八番?の「バーコードワークショップ」をやらせて頂きましたが、今年は物質・材料研究機構の石井先生が行なうワークショップのお手伝いです。

テーマはQRコード。その仕組みを全部理解するのはかなり難しい対象ですが、「どれくらい汚されたら読めなくなるのか」を実験する内容でした。まず用意された15㎝四方の立体コピー版QRコードを使って、その形状や位置決めコードなどについて観察・触察します。このQRコードは金属の板にネオジム磁石で貼り付けられています。そしてPCを起動して、バーコードスキャナで読み込み中身を確認します。

次にその立体QRコード上に1cm角や1×2cmの磁石の板を置いて「汚して」行きます。ここで「まとまった領域を隠す場合、かなり耐性がある」とか、「縦方向や横方向など決まった向きに汚しても耐性が高い」などを試して実感してもらいます。途中、読み取り用のレーザーの性質を説明するためにパラメトリックスピーカーを使った反射の実験なども交えながら、位置決めコード(マーカー)のひとつを縦横斜めに読み取れなくすると少ない汚れでも読めなくなることなどを試します。

事前にメールや対面で石井先生と何度かやりとりさせて頂き、準備した本ワークショップ、参加してくれた生徒さんたちの積極性にも助けられて大変盛り上がりました。

黒部市吉田科学館特別展

2004年11月30日 土曜日、雨の富山に出向いて黒部市吉田科学館の特別展「さわる宇宙展」を訪れ、嶺重先生の講演会に参加してきました。当日少し早く着いたのでプラネタリウムも堪能することに。ドラえもんの「宇宙の模型」を鑑賞したのですが、なかなかよく出来ていて、全天周を上手に使ったコンテンツでした。

吉田科学館外観。曇り空。

特別展では主に学芸員の野寺さんが作成された3Dモデルが展示されていました。ロケットや惑星などが並ぶ中、なかなか興味深かったのは「リンゴの重さを比較して、太陽系の惑星の重力を感じる」という展示です。同じ大きさのリンゴの模型が並べられていたのですが、重さのコントロールは単純に密度を変えただけという話が面白かったです。「普通に充填して作ってみたら300グラムくらいになったので、それを基準にして単純にパーセンテージで指定した」ということで、厳密には表面の分とか誤差は出ますが、ほぼ希望通りの重さになったということでした。

嶺重先生のお話のテーマは「ブラックホール」でした。大々的にニュースになった「ブラックホールの画像」を触知できるようにした模型が配られ、参加者へのお土産になっていました。会場には小学生が多かったこともあり、できるだけかみ砕いた説明でしたが、嶺重先生の研究生活半生のご説明の方が興味深かったという印象…(笑)。個人的には「アメリカの肉は硬かった」というフレーズが一番記憶に残っています(失礼)。

二球式プラネタリウム投影機の3Dプリンタ模型。紫色の本体。

3Dモデルに話を戻すと、プラネタリウムの「二球式プラネタリウム(投影機)」のモデルが一番楽しめました。やはり動く/動かせるものが3Dプリンタには向いているんでしょうか。隣に「古いプラネタリウム操作盤」が置いてあったのも良かったです。野寺さんによる「このつまみをひねるとココが動くんです」という説明が、模型なくしては活きてこないので、そういう意味でも「今日イチのコンテンツだ!」と感じた次第。まぁ工学屋が興味をもつネタだったこともありますが、学科の学生を連れて行っても、両方触れるので楽しいのではないかなー、と思いました。


さて、富山といえば海産物。「海老・蟹・蛸・烏賊・貝・鯖」アレルギーの自分としては結構ハードルの高い土地なのですが、せっかくなので「食べられる海産」を食べて帰りたい。魚卵や鯖以外なら食べられるので、お食事処の店頭メニューを見てみるのですが、「蟹いくら丼」「白海老マグロ丼」など私にとって「余計な一品」がついてきます…「フツーのいくら丼にして欲しい…」と呟きながら、テイクアウト系にすべく「ますのすし」を頂きました。

2024年10月振り返り

11月も半ばになるという時期に、ようやく10月振り返りです。10月は新学期の授業や運営業務に追われる秋がスタート…とはいえ気温はまぁまぁ夏でしたね。少し気になって昨年の10月のつくば市の気温とかを気象庁で調べてみたのですが、昨年も30度の日があったみたいです。しかし体感的には本当にこの10年間で日本は暑く、いや熱くなったな~と思います。

さて10月のスケジュールを改めて見返してみると、連日授業と会議で埋まっている中、イベントもいくつかありました。毎年呼んで頂いている大曽根小学校のUD講座、学園祭、ICCの報告会などなど…。月の後半に集中していました。

大曽根小UD講演

大曽根小学校の講演会、毎年6年生の総合学習の一環でお招きいただいています。私が総論をお話して、後半は学生さんたちが話します。天久保の学生さんたちは今回1人が手話を使い、もう1人は音声を使うという多様性を示すスタイルでした。

今年印象深かったのは「ボディソープの触覚記号」を知っている生徒さんが数名いたことです。同じ質問をつくば市UD研修で新規採用職員さんたちにも聞いていますが、だいたい100人中100人が知りません:)。子供たちの方が知っているというのは喜ばしいことです。しかしこのボディソープの触覚記号、2014年にJIS化しているはずなのですが、10年経ってもほとんど知られていないのが不思議です。シャンプー&リンスはものすごく知名度高いんですけどね。

学園祭

学園祭、まさか名前が変わるとは思っていなかった…とほとんどの教職員がひっくり返ったと思います。もちろん学生主体の企画ですから、命名も自由ではあるんですけどね。教授会や教員会議でも「春日祭日程」云々~って出てきていたのですが、近づいてみたら「秋月祭」なるものが準備されていました。誰も何も言えませんが、なかなか思い切ったなぁと感じました。小さい大学の小さい学園祭ですが、学生たちは頑張って企画して、多くのお客さんたちを集めていました。

この写真は点訳後援会のみなさんのブースで展示されていた「韓国のビール」で、点字は韓国語です。「맥주」のパーツが1点ずつ書かれているので5文字です。

ICC報告会

今年の報告会は、アイオワ研修がなかったことと参加人数が5人と例年より多かったことから、ICCだけで1時間使って実施しました。5人それぞれの視点を交えながら10日間を順に説明した後、それぞれの参加学生から同級生や下級生たちを意識したメッセージで締めくくり。印象に残ったのは「英語が分からないとどんどん顔が険しくなって、さらに話しかけてもらいにくくなる。だから笑顔を忘れずに。Don’t forge your smile!」というメッセージ。これはホント、とても重要なのですが、さてさて下級生たちに伝わったかどうか。

Brother / Lighthouse

怒涛の9月が終わってほっとしているのも束の間、2024年度、2学期がスタートしました。しかし9月は忙しかったです。15日にドイツから帰国して17日に京都に移動、京大開催のHI2024に参加してしゃべるダーツのポスタープレゼンをこなしてきました。

京大吉田キャンパス、百周年時計台記念館。

この発表用の荷物の発送について、ドイツに行く前にしておかないと間に合わないことは明白です。そこで出国前の9月5日にクロネコさんに持ち込んだのですが…。そこで告げられたのは「17日着はダメですね~。」というお言葉。そうなんです。日時指定は1週間より先はできないんですね。言われれば確かに当たり前、1年後とか指定して自分宛に送れば「無料倉庫」になりますもんね。というわけで、出国後の発送を総務にお願いしてドイツに発ちました。

そんな経緯の荷物も無事吉田キャンパスに届いており、実物ダーツとプロジェクタ投影というポスターらしからぬポスターを掲示した発表ができました。

東京大学安田講堂

そして翌週末、28~29日は「インクルVI」なるハッカソン・アイディアソンイベントのために本郷へ。視覚障害者も一緒に楽しめる「あそび(ゲーム)」を作るという、なかなか楽しい企画でした。

というわけで、京大から東大へハシゴした9月下旬、研究社のLighthouseを思い出したりしてました(-_-;。今の高校生は電子辞書なんでしょうね…

Dagstuhl Seminar 24371

7月オーストリア、8月イタリア、そして3往復目の9月はドイツです。
2024年9月8日から13日にかけてDagstuhl Seminar 24371に参加させて頂きました。

Dagstuhl Seminarとは

検索すると出てきますが、Dagstuhl SeminarとはドイツのLeibniz-Zentrum für Informatik GmbH (LZH)が主催する招待制・宿泊型セミナーです。Organizerが応募した企画が審査されて実施されます。日本のNIIが実施しているShonan Meegingのモデルになっているセミナーになります。

とはいえ、恥ずかしながら生粋のComputer Science出身ではない私は昨年9月にinvitationメールが来るまでDagstuhlのことは「dblpのところ」程度の認識でセミナーのことは知りませんでした。実際、国内での認知度は低いのかもしれません。周囲に「Dagstuhlに行ってきた」と言っても通じるのは経験者くらいなようです。

しかしinvitation letterが届いてから、長らくご一緒させて頂いている新潟大の渡辺哲也さんが2023年6月にInclusive Data Visualizationに参加していた、という話を聞いて、渡りに船、色々聞ける、…と思うと同時に少し笑ってしまいました。20年前のドイツ在外研究員の時も彼の米国滞在の後でしたし、そういうイベントはトレースする運命なのかもしれません。

Invitationの経緯

さて、その有り難いDagstuhlのinvitation、テーマは「Extended Reality Accessibility」です。実は、何故呼んで頂けたのか最初不思議だったのですが、OrganizerやParticipantsリストを見て納得しました。つくば市で2022年に開かれたVRST2022というバーチャルリアリティ系の国際会議に、私はAccessibility担当のOrganizersとして参加していたのですが、そのメンバーが関係していたことで声をかけてもらえたようでした。

まずはタクシー手配から

Dagstuhlのページにも書いてありますが、会場となるSchloss Dagstuhl、あまり交通の便の良いところではありません。最寄り駅から20~30km離れているうえ、タクシーも事前予約しておかないと駅では捕まえられないというお話。しかもドイツ語しかダメだよと脅される文面が出ています。というわけで最初は乗り合わせる相手探しとなります。そのために専用アカウントでログインしてアクセスできるWikiが用意されていて、時期が近づくと自然と皆が予定を書き込んでシェアし始める、という形です。

Turkismuhle駅。

私は少しWikiの書き込みが進んだところで、ひとつ前に書き込んでいたイタリア人とシェアすることにしてタクシー会社にメールして予約したのですが、同時期にDiscordも始まり、travel-plansチャンネルでやりとりが始まります。今回結構な人数(40名ちょっと)なので、すったもんだの末に14人が同じ時間にTurkismuhleに着くことになり、8人乗り×2台が手配された…はずでした。しかし着いてみると1台だけしか迎えに来ておらず、そのタクシーが2往復する羽目に。そこに着くまでの電車も途中で止まって乗り換えさせられたり、Deutsche Bahnらしい道中だったのですが、おかげでその場にいたメンバーと楽しく(?)過ごすことができました。さらに、実は最初にアクセスしたイタリアの方は同時期の違うセミナーだったというオチもついたのでした(何故彼女がWikiに書き込めたのかは謎です)。

Schloss Dagstuhl、その設備や環境

過去に参加した方々が色々レポートしていらっしゃるように、Dagstuhlはルクセンブルクの国境近く、閑静な森の中にあります。宿泊は「Schloss」と呼ばれるいわゆるお城の方と、渡り廊下で接続されたレセプションのある「新館」の両方にあります。

ルームキー登録機

Schloss Dagstuhlに到着すると、まずは事前に聞いていた4桁のコードで解錠して、レセプションへ。専用アカウントと同じアカウントネームとパスワードをドアキーを、登録する機械(右写真)に入力します。NFCのブランクキーをかざすと、部屋番号に対応する鍵情報が書き込まれます。それ以降はカードキーで自分の部屋やエントランスを解錠することができるようになります。

私はSchloss側でしたが、新館の参加者からは羨ましがられたので、参加者的には「当たり」の方なのかもしれません(単なるflatteryかも)。でも多分、新館の方が設備は新しいと思います。ちなみに新館側には広い会議室、図書館、地下にはサウナや卓球台、サッカーゲームなどがあり、Schloss側には小さ目の会議室、music roomと呼ばれるピアノやギターの備えられている部屋、食堂、そして酒盛り部屋?などがあります。music roomを抜けると細い階段を登る特別な宿泊部屋もあったりしますし、教会が併設されていたりもします。下の写真は左がschloss内のmusic room、右が新館のラウンジです。雰囲気の違いが伝わりますでしょうか。

ギターやピアノなどの楽器の置かれたシャンデリアの吊るされたmusic roomと、モダンなデザインの椅子やライブラリに通じる螺旋階段などが見える新館ラウンジ。

シングルの宿泊部屋の設備としては、90cm幅くらいのベッド、机、クローゼット、シャワーとトイレと洗面台。テレビはありません。普段からほとんどテレビは見ませんが出先のホテルではモニター替わりによく使うので、今回「テレビ(モニタ)はないだろうな」と思ってサブモニタを持ってきたのは正解でした。

通信環境はあまり良くはない、とぼやく参加者も多かったのですが、2桁~3桁程度のスピードは出てました。

食事環境

朝食は7時半から、普通の欧州ビュッフェです。日を追うごとに夜が長くなるため(^-^)7時半に来る参加者は減っていきます…。そしてランチは12時、ディナーは18時、間の15時くらいにはケーキタイム、と食事については至れり尽くせりです。また、新館・Schlossどちらにもラウンジ的な場所がありコーヒーマシンが設置されており自由に飲むことができます。

よくDagstuhlセミナーの報告記事を読むと「テーブルにネームタグが置かれてシャッフルされてコミュニケーションを促進する」と書かれていますが、これはどうもそんなに計算されてシャッフルされているわけではなく、キッチンスタッフが適当に(…と言うと失礼ですが)並べているだけのような気がしました。というのも、私は海産物アレルギーがあるので一応Webのリクエストシートに書いておいたのですが、その結果ほぼほぼ毎回同じテーブルにネームタグが置かれて、ベジタリアンで登録しているメンバーと顔を合わせる回数が非常に多かったのです。彼らも「いつもこのテーブルだなぁ」と呟いていました。確証はありませんが、キッチンスタッフが分かりやすいように配慮の必要(そうな)参加者をまとめておくような印象を受けました。

また、ワインやビール、ジュースや水といった「ボトルに入ったもの」は自己申告制で専用の用紙に消費した数を記して行き、チェックアウト時に清算する仕組みです。毎晩毎晩、結構な(お酒の)ボトルが消費されていきます…

参加者の出身

Participantsリストに国名がツーレターで書いてあるのですが、例えばDEだからドイツ人、NZだからニュージーランド人、…とは限りません。当たり前なのですが、あくまで「現在の所属」がそうなだけです。実際に話してみると、生まれや育った国・学位を取った国・今働いている国、がバラバラなメンバーがちらほらいらっしゃいました。色々なお国事情を聞けて面白かったのですが、「ニュージーランドは公式に結婚しなくても子供を産んで育てるのに苦労しない」という話が印象に残っています。

Seminarの内容について

肝心の内容について書いていませんでした…。スケジュールはセミナーページに載っていますが、基本的にいくつかのプレゼンテーションとディスカッションで構成されています。プレゼンテーションはメンバー内の当事者(視覚障害者、車椅子利用者)や非営利組織のEnvisioning Accessのスタッフなどが担当しました。Envisioning Accessは肢体不自由者支援をしているのですが、そのルーツが「介助猿」の飼育や手配、管理等にあるというのがなかなか日本では考えられず興味深かったです。(私が知らなかっただけかもしれません)

議論についてはMiroを利用しつつ、用意された様々なテーマに従ってWorld Cafe形式で進められました。とはいえ、最初のグルーピングだけシールカラーによってランダムに行われたものの、その後は新たなテーマ設定が話し合われて、Miroの投票機能を使って希望するテーマの議論に加わるという形になっていきました。

最初に用意されていたテーマは「Chances of XR for people with accessibility」「Application Areas for People with impairments」「Accessibility for Social interactions」など、20種類に亘ります。

その後、2日目以降は「Non-Visual Interaction in XR」「Accessible Tangible Games」「AI as enabler for XR Accessibility」「Lower Vision Interaction in XR」などで、私はTangible gameのグループにずっと参加していました。

利用ツールは前述のMiroの他、Google Docsや開始前から始められたDiscordなどで、情報共有とディスカッションが延々と続きます。分野的にもコミュニティ的にもアウェーなのでかなり苦労しましたが、色々と勉強になりました。

Demoセッション

何名かが自分のシステムを持ってきて体験してもらうDemoもありました。私は本来AR/VRな人ではないのですが、デバイスとして興味を持ってもらえるかと思いSC-10を無線で動かす「片手点図ディスプレイ」を持参して体験してもらいました。

Oculusを被って赤ちゃんを抱っこするシミュレータというかゲームなどもあり、あやしているうちに床に落としてしまう事故が頻発していました…

Excursion

水曜日の午後にはエクスカーションがあり、希望者はバスでTrierに出向いて、短いガイドツアーに参加しました。何名かはTrierには興味がなかったり自分の仕事を優先させたりしてDagstuhlに残りましたが、その後合流してワイナリーの「Weingut-Weinstube-Restaurant von Nell」に全員で移動し、工場の見学と食事、そしてワインを楽しみました。

Geocaching

メンバーの中にGeocachingを愛する方が数名いらして、食後の散歩・ハイク中に2回ほど見つけていました。ネタバレになるので詳しくは書けませんが、なかなか凝った仕組みのものが隠されていて、一同楽しんでいました。

Ghost hunt

宝探しと言えば会場内でもQRコードを使ったGhost Huntingが企画されていて、80個以上のGhostを求めてあちこち探し回る参加者の方もいらっしゃいました。最後は壁の案内モニターの角に現れるQRコードGhostを捕まえるため、皆で付き合って我慢強く待つ姿が見られました…


というわけで本当に書ききれない、充実した5日間を過ごしました。帰国してからもDiscordでの議論がじわじわ進んでいます。

ICC2024

この夏2往復目の欧州、8/4-13の10日間イタリア・ローマで開催された視覚障害学生サマーキャンプICCも無事終了。2年生4名+4年生1名の5名の学生を引率して参加してきました。2003年から数えて21年、ICC参加史上最大人数です。

今回は学生同士のコミュニケーションを促進したり語学習得状況の確認などをしたりする目的で、4月から隔週でミーティングをしたりしていたのですが、まぁ何をやったとしても、どの学生さんも現地に行って「準備不足を後悔」します(私も毎年後悔しますが)。全体として本当に彼らは頑張ってくれたと思うのですが、皆現地に行くと「現実を知る」ことになります。学生さんのコメントで特に印象深かったのは「自分の英語が通じない!国内で相手になってくれるネイティブの先生や留学生の方々は、自分たちに合わせてくれていたことを実感した…」というものでした。こういう経験、本当に大事です。それでも本学の学生さんたちは各国の参加者らと積極的にコミュニケーションを取り、友達を増やして帰ってくることができました。

そして全体を通して良くも悪くもイタリア流。昨年のチェコが本当にキッチリ用意周到に進めてくれていただけに、流動的というかフレキシブルというか(^^;、直前までほぼ何も決まらない状況に少しハラハラしました。そのおかげでこちらも旧知の友人や新しい知人らとよく話すことができたので結果オーライですが(…というか色々主張していかないと切り抜けられない状況だったり…)。

ワークショップについては、同行して頂いた障害者基礎教育研究部の嶋先生がディスクゴルフを提案して下さったので、復活させた「Japanese Writing System」との2本立てで挑みました。JWSはカタカナで名前を書くところから始まり、翻訳エンジンや書き順サイトなどを駆使して書道を楽しむワークショップです。書道キットを5人分持っていくのが大変なので、今回は参加者は筆ペンを使うことにしました。

するとこれらがなかなかの人気具合で、8タイムスロット中ディスクゴルフが3回、JWSが4回という盛況状態。連日「午前はディスクゴルフ、午後はJWS」という日が続き、日中の暑さもあいまって毎日ヘトヘトでした。

エクスカーションはローマ近郊のテーマパーク、Magic Landで過ごすというもので、これも2011年のフェラーラでのICCを彷彿とさせます。

最終日のパーティでは例年国別パフォーマンスが行われます。昨年は1名だったこともあり、同じく1名参加のドイツとオーストリアと一緒に寸劇を行ないましたが、今年は5人のまとまった人数だったので「しっかり歌って踊る」ことができました。他の国と比べても本当に素晴らしいステージだったと思います。100人近い外国人の前で歌う経験、なかなか出来ないでしょうから、これも(多分)学生さんたちにとって良い経験になったことと思います。

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