小林@筑波技大/福祉工学やら支援技術やら

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科学へジャンプ・サマーキャンプ2023

7 月15日(土)から17日(月・祝)までの二泊三日、本学にて科学へジャンプ・サマーキャンプ2023が開催されました。今回は15周年&10回目のアニバーサリー回でした。それが理由というわけでもないのですが、この機会に少し昔話を記録しておこうと思います。

思い起こせば2008年に、最初の同イベントを戸山サンライズで実施したのが15年前です。欧州のサマーキャンプICCの経験を活かせないか、と鈴木昌和先生、山口雄仁先生、渡辺哲也先生、故藤芳衛先生らから誘われ、主要メンバーに加えて頂きました。

その後2009~2011年の3年間、JSTの予算がつきました。この頃は各盲学校さんとのネットワークを強化したり、地域版がスタートしたり、じわじわと活動を広めて行った時期です。この期間の全国対象のキャンプは2010年と11年の2回でした。

そしてJSTの支援が終わった翌2012年に守谷で実施した後、さすがに毎年はスタッフが疲れてしまうな…と気づきました(ようやく…)。そこで2013はサマーキャンプを実施しない代わりにICCHPへの参加支援のみ行いました。1年お休みです。その後、2014年に第5回のキャンプを同じ守谷で実施しました。

しかし、主要メンバーの先生方が関わる国際会議のICCHPも偶数年開催のため、偶数年の夏は本当に忙しい…。そういった理由から、2015年から「奇数年での開催」とすることにしました。そして無事、2017年、2019年と連続3回、「あいち健康プラザホテル」で実施したというわけです。この頃利用した同施設は、駅からは遠いものの全てまとまっているので、視覚障害の中高生を集めるには非常に適した場所でした。

実は2022まで、とにかく会場の選定が大変だったのです。宿泊場所は4~5名が一部屋で泊まれるところ、さらにワークショップを行う会議室が近くて、食事もできて…。なかなか条件に合致する「安い」施設はありません。通常のセミナーハウスはだいたい宿泊がシングルですし、食事もビュッフェスタイルが多いのです。視覚障害の中高生を集めるにはあまり適していません。青少年自然の家のようなところは2010年に使っているのですが、他の団体との調整がかなり煩雑で入浴時間が当日まで決まらないなど、やはり困難が多かったのです。

そんな状況でしたので、「ホテルのツイン、歩いて移動」はある意味トライアルでした。しかしその結果、「意外と良いのでは」というのが実施してみての感想でした。従来の半分程度の人数でしたが、それ故参加した生徒たちは、全員の声と名前などを認識してくれたように思います。1泊2日ではありましたが、我々の方も全員の名前と顔を覚えることができました。

このように進めてきた科学へジャンプ・サマーキャンプですが、コロナのために残念ながら2021は実施できませんでした。しかしこのままズルズルとやらないでおくと皆さんから忘れられてしまう…という危機感があり、2022年の9月に「1泊で10名」という形式で実施することにしました。従来の1/3の期間、半分の人数です。既に「サマー」ではないような気もしますが、まぁ大学はまだ夏休みだから…などと言い訳をしつつ、場所は渡辺先生のお膝元、新潟となりました。さらにこの年は「ホテルで泊まって会場に移動」というスタイルを試してみました。

というわけで2023です。当初夏休みの実施を予定していましたが、私の都合がつかず、7月の連休を利用することにしました。ほぼ2週に一回程度、何度もオンラインでの委員会を重ね、エクスカーションとしてJAXAを訪れることになりました。そして富山の地域版、科学へジャンプ・イン北陸に参加しているインテックさんに協賛&ワークショップを担当して頂いたり、とても充実したイベントになりました。

詳細は後日報告書としてアップしたいと思っていますが、15周年・10回目という節目に本学で開催できたことはとても嬉しく感じています。

卒業生もボランティアで駆け付けてくれましたし、在校生も協力してくれました。小規模なイベントではありますが、無事執り行うことができたこと、ご協力いただいた皆様のお陰です。感謝いたします。

2008年当初、「何の実績もない団体が募集しても、応募してくれる生徒さんがいるかどうか…」と心配していた科学へジャンプ。今では「科学へ」と検索ボックスに入れると「ジャンプ」まで補完してくれるようになりました。本当に驚きです。今後も、なんとか細く長く続けていけたらなぁと願っております。

(検索ボックスの件、自分の環境だけなのかな…と疑う時もあるのですが、そうでもないです….よね?)

Windows11のバッテリーアイコンの違いが見分けにくい

タイトルそのまんまの内容です。Windows11のタスクバー右端、通知領域(って言うんでしたっけ)のバッテリーアイコン、充電時は図の左側のように稲妻マークが添えられます。一方、バッテリーが減ってエコモードのような状態になると右側のように葉っぱマークが添えられます。コレ、ものすごく小さくて老眼の進んだ私にはなんだか見分けがつきにくい。

そしてだいたい葉っぱマークがついた時はバッテリーが減っているので、急いでACアダプタとかつなぐわけです。しかし「ちゃんと給電されているのか」がぱっと見分かりにくい…結局マウスオーバーで「充電中」とか出したりしています。もっとこう、充電中なのが分かりやすいベタなアイコンにして欲しいと思ったりしています。

ハイレナイ トコロ

前から気になっているのですが、トイレ前の触図の凡例にある「入れない所」もしくは「入れない場所」について。どこで誰が決めた表現なのか興味があります。JISの例で「非通行部分」となっているのは読んだことがあります(「JIS規格として発行される触知案内図表示法の概要について」)が、「ハイレナイトコロ」と書かれると何ともモヤモヤ。

確かに入れないところではあるのですが、柱や壁に対して言われると少し違和感…そもそも入ろうとはしていないし…いや、ホグワーツへの道かもしれませんが…

トイレ前触図全体図

写真は近くのショッピングモールのトイレ前触図です。

さて、本題の凡例を見てみますと:

小便器とサニタリーボックスの凡例。点字はそれぞれ「しょーべんき」と「はいれない ところ」

小便器は「しょーべんき」ですが、サニタリーボックスが「はいれない ところ」になっています。ちなみにサニタリーボックスは墨字で黒い丸で表していて、個室にいくつか設置してあるところと設置していないところがあります。見える人は事前にサニタリーボックスのある個室が分かるようになっていますが、触図にはサニタリーボックスを表す突起はなくて、代わりに「はいれない ところ」を示すドットパターンが示されているというわけです。このあたり、情報保障的には同じ情報ではないという点も考えさせられますが、個人的に気になっているのはこの「はいれない ところ」という表現です。いつ頃どのようにして決まったのか知りたい…

左上の凡例。現在地と洋式、手洗いなど。
最初にあるのは「トイレごあんない」

続いて左上を見てみると「トイレMAP」の下には「といれ ごあんない」とあります。洋式トイレは墨字が「洋式」だけですが点字は「よーしき べんき」となっていて「小便器」との対応が取れている印象です。手洗いはそのまま「てあらい」ですね。手洗いや小便器は、下が壁側になるような凡例となっていました。最後に「たもくてき といれには、たもくてき しーとが あります。」と書かれていました。一瞬何が言いたいのか悩みますが「多目的シート」の意味を知っていれば重要な情報です。


多分サン工芸さんの触図だと思いますが、最近は現在地が分かりやすいように少し高い突起の半球になっていることが多いですね。このトイレMAPは「はんれい」のすぐ下に「げんざいち」があり、更に「『ずの ひだり した』」という説明も加わっているため現在地を探しやすくなっています。

ただ、細かい点ですが墨字だと凡例が「現在地」、地図表示が「現在位置」になっているのはちょっと気になりました。そしてこの写真では肝心の現在位置表示の半球が抜けちゃっているのが一番問題だったり…(-_-;

速やかにインフォメーションセンターに連絡しておきましたが、直してくれるでしょうか。

一方、卒業生にこの話をしたら「あまりトイレの前の触図は触りたくないので(よく知りません)…」という答えが返ってきました。ううむ。不特定多数が触る可能性のある公共施設での触図、スマホのようなパーソナルデバイスでうまく解決できる枠組みがあると嬉しいですね。

What time is it ?

先週、久々に東北新幹線で出張してきました。写真は上野駅の待合室にある電光掲示板です。

待合室の電光掲示板、出発する各列車の時刻が表示されています。

上越・北陸新幹線と東北系新幹線、それぞれの出発時刻順に各列車の情報が並べられているのですが…そう、「今何時」なのかこのパネルだけでは分からない、つまり出発までの時間的余裕がすぐに分からないのです。やはり真ん中に時計が欲しいような気がします。

…と思って左の壁を見ると、お。デジタル時計がありました。しかし…

デジタル時計。かなり表示が見にくいのです。

どこのセグメントが光っているのかすぐには分かりませんでした(-_-;


鉄道はあまり詳しくありませんが、日本では、地下鉄や路面電車など比較的本数の多い交通機関においても「次の出発時刻(って言うんでしょうか)」や「次の次の出発時刻」が表示されていると思います。しかしこの方法だと時間的な余裕を知るために「現在時刻を確認して、引き算する」という多少負荷のかかる作業をしなくてはいけません。スマホを取り出すのに苦労するような方もいらっしゃるでしょうし。一方、欧州のメトロや路面電車では次の車両が「到着するまでの時間」が表示されていることが多いような気がします。

それは時間に正確な運行が行われていないから、という見方もありますが、現場で現在時刻を確認しなくても次のプランが考えられる欧州式は、それなりに便利です。インタフェースとしてどちらが良いのかはどこかで議論されているのでしょうか。興味あります。なぜ日本は時刻表示になったのかとか。


今年の春あたりJRが順次時計を撤去しているというニュースを読んだ記憶があります。腕時計をしない人も増えてきたので、スマホが手元になかったりバッテリー切れになっていたりすると、ホームでキョロキョロする羽目になるかもしれません。

いや、多少遅れてもスマホで連絡するので「あまり時間を気にしない人が増える」のかも。

「国内の視覚障害者31万人」

昔から工学系の視覚障害者支援に関する文献を読んでいると目にする「国内の視覚障害者は約31万人~」というフレーズ。厚労省統計(身体障害児・者実態調査)をリファーしつつ「はじめに」などで触れるわけですが、自分もそうしていた記憶があります。

平成13年、18年と5年毎に行われるこの調査、平成23年からは「生活のしづらさなどに関する調査」という名称になりました。平成28年の次は令和3年の予定でしたが、コロナのせいで延期になって今年実施されているのですね。知りませんでした。気になる調査結果は当然ながら厚労省のページで公開されています。

さて、この「視覚障害者数~」について、ここで書いておきたいことは、その「年齢構成」です。分かっている人は今更何を、とおっしゃられると思います。しかし、あまり意識せずにシンポジウム予稿やら研究会予稿やら書いている学生さんがいるような気がします。発表会場で学生さんたちに聞いてみると「知りませんでした」という声が多いです。確認するのは簡単で、上記ホームページからダウンロードできるPDF、9ページに「第6表 身体障害者手帳所持者数、年齢階級別(年次推移)」があるのでそれを見るだけです。視覚障害の行を取り出してみますと:

総数0-910-1718-1920-2930-3940-4950-5960-6465-6970-不詳
3121488182925401755
視覚障害の手帳所持者数(千人)

…とこんな感じです。単位は千人なので、総数は31万2千人、確かに約31万人です。そして、65歳以上で21万5千人、ほぼ2/3を占めることも分かります。もちろん若年層も存在していますし、福祉工学の意義として、困っていらっしゃる人たちを支援するという立場に絶対数は関係してこないこともあります。しかし、全体的な傾向を知っているかいないかによって「国内の視覚障害者は約31万人おり~」と書いたり言ったりする時のニュアンスが異なってくると思うのです。自分も若い頃はあまり気にしていなかったので、今の学生さんたちには是非、こういった数字の出どころと、そのソースから読み取ることのできる内容について、よく考えて欲しいなぁ、と思っています。

同様のフレーズに「視覚は8割」があったりしますが、こちらについては先日本学を退職された加藤先生が書いたテクノレポートが人気なようです。
http://altmetrics.ceek.jp/article/hdl.handle.net/10460/1607

3年ぶり、お台場SIGACI対面開催

7日水曜・8日木曜にHI学会アクセシブル・インタフェース研究会(SIGACI)の恒例12月イベントが、3年ぶりの対面ベースのハイブリッドで開催されました。2020年のコロナ直撃の後、「まぁ冬には収まるだろう」などと高を括っていましたが、バタバタとオンラインの波に飲まれて行き、2020年12月、2021年3月・12月とオンライン開催が続くことに…。

そしてようやく今年3月にハイブリッドでの実施、そして12月の研究会もなんとか無事に対面ベースで行うことができました。コロナの中、委員長をバトンタッチさせて頂いた工学院の田中先生、連催WITの産総研・細野様、情報保障担当の本学河野先生、Web担当の兵庫県立大・山添先生、いつも会場手配頂く産総研・関様、関係者の皆様ありがとうございました。

写真は会場の産総研臨海副都心センター11階からの景色。3年前と変わらずフジテレビ・レインボーブリッジ・東京タワー、そしてユニコーンガンダムという組み合わせが一望できます。

更に何より驚いたのは、日本科学未来館側の道路で毎回お世話になっていたカレーのキッチンカー(フードトラック)がまだ来ていたこと。「カレーのお鍋の上で小銭のやりとりをする」というスリルを、今年も味わうことができました。

おもてなしガイド

おもてなしガイドアイコン

関わっている研究分野のひとつに博物館・美術館・水族館等文化施設のアクセシビリティがあります。入口で貸し出してくれる音声案内ガイドの使いやすさなどに興味があるのですが、最近は専用機器ではなくスマホによる音声ガイドも増えてきました。コロナ前、2019年に訪れたアムステルダムのRIJKS MUSEUMでもアプリが用意されていて、魅力的なコンテンツがもりだくさんでした。施設側はコンテンツ管理がサーバで可能、ユーザ側は自分の端末が利用できて衛生的、スクリーンリーダー対応してくれていればとりあえず視覚障害者も使える、とまぁメリットが多いです。

そんな中、とあるミーティングにてヤマハの「おもてなしガイド」を知りました。2015年あたりに実証実験を進めているので結構古くからあるものですが、これまで使ったことがありませんでした。つくば近辺にはスポットがないのですが、京都に行く機会があったら試してみたいと思います。

これは可聴域外の信号をスピーカーから出して、マイクで拾うことで音声・音響情報以外の、でも関連した情報を画面に表示したりできるというものです。しかし公式ページを見ても何をしているのか分かりにくいですね。イメージ先行なのも良いのですが、もう少し技術的に何がポイントなのか書いてくれると、使いどころとか使えないケースとか想像しやすいと思うのですが…。音を聞いて翻訳してくれる、という表現だと音声認識と間違う人がいそうな気がします。

スピーカーで情報を送るということから、同期信号を乗せて字幕のタイミングを合わせる「UDCast」を思い出しました。ちなみにUDCastのサイトはシンクソノラのことがちゃんと書いてあり、分かりやすくなったと思います。以前は「字幕データが送られてくる」と誤解した人もいたようですが、「音に入っているのは同期信号だけですよ、そこがキモです」と技術情報として出ています。

(しかしおもてなしガイドのトップ動画、2015年だとしてもデニムの上下は流石にナイのでは….)

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