小林@筑波技大/福祉工学やら支援技術やら

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AIスーツケース

毎年12月に研究会でお台場産総研に来ているのですが、実は日本科学未来館のAIスーツケース、まだ見たことがありませんでした。そんな中、ようやく先週ハンガリー人の知人と行く機会があったので体験することができました。

この手の「盲導犬ロボ」的なものはもう何十年も前から研究ネタにされてきているわけですが、PCの小型化やセンサの高性能化、モーターの効率化など色々な技術的な発展があって実現されているというのが第一印象です。どーんと上に乗っかったLiDARと、予想より小型のPC筐体、そしてバッテリーが入れられたケースはもちろん荷物を入れるスペースはないのですが(笑)何より驚いたのは「使っていて目立たない」ことです。

AIスーツケースの中身。
真ん中にバッテリー、右側に制御用PC,左側にハブが見える。左下は制御用の別CPUだと思われる。センサもしくはモーター用?

博物館や科学館の中でスーツケース..というより大きさ的にはキャリーケース、を持って歩くというのは実際には奇妙です。しかし、「そういう人が歩いていて」も、それほど注目は集めません。体験中も、他の来館者にじろじろ見られることはありませんでした。ロボットや犬(もしくは猫?)といった外観ではなく、あえてキャリーケースにしたセンスに改めて感動した次第です。

関連してソフトウェア的に面白かったのは、人の集団が前に居て通路が狭くなっている時には進まないことです。ひたすら待ちます。これについては目立たないことが逆効果?で、多分「白杖を持っていたらすぐにどいてくれる方々」も、気づかず通路を塞ぎ続けてしまうわけでして、どちらが良いということではないのですが小さな発見でした。


ARマーカー技術検証実施中、の看板

また、ある展示スペースにはARマーカーが貼ってあったのですが、これは独自

サーバーを立てて、マーカーに対応した音声案内をスマホアプリで提示してくれるようなシステムとのことでした。残念ながら試験運用で、その日は稼働していなかったのですが、ARマーカーを使っている理由は「遠くから識別しやすいオープンプラットフォームだから」ということです。あえてQRコードにテキスト情報やURLを入れるというようなことをしないあたりが良いですね。QRコードだと近づけないと読み取れませんが、ARマーカーなら大丈夫そうです。

科学へジャンプ・イン東京2024

2024年12月1日 日曜日。富山から戻って翌日、科学へジャンプの地域版「イン東京」に参加してきました。昨年は十八番?の「バーコードワークショップ」をやらせて頂きましたが、今年は物質・材料研究機構の石井先生が行なうワークショップのお手伝いです。

テーマはQRコード。その仕組みを全部理解するのはかなり難しい対象ですが、「どれくらい汚されたら読めなくなるのか」を実験する内容でした。まず用意された15㎝四方の立体コピー版QRコードを使って、その形状や位置決めコードなどについて観察・触察します。このQRコードは金属の板にネオジム磁石で貼り付けられています。そしてPCを起動して、バーコードスキャナで読み込み中身を確認します。

次にその立体QRコード上に1cm角や1×2cmの磁石の板を置いて「汚して」行きます。ここで「まとまった領域を隠す場合、かなり耐性がある」とか、「縦方向や横方向など決まった向きに汚しても耐性が高い」などを試して実感してもらいます。途中、読み取り用のレーザーの性質を説明するためにパラメトリックスピーカーを使った反射の実験なども交えながら、位置決めコード(マーカー)のひとつを縦横斜めに読み取れなくすると少ない汚れでも読めなくなることなどを試します。

事前にメールや対面で石井先生と何度かやりとりさせて頂き、準備した本ワークショップ、参加してくれた生徒さんたちの積極性にも助けられて大変盛り上がりました。

黒部市吉田科学館特別展

2004年11月30日 土曜日、雨の富山に出向いて黒部市吉田科学館の特別展「さわる宇宙展」を訪れ、嶺重先生の講演会に参加してきました。当日少し早く着いたのでプラネタリウムも堪能することに。ドラえもんの「宇宙の模型」を鑑賞したのですが、なかなかよく出来ていて、全天周を上手に使ったコンテンツでした。

吉田科学館外観。曇り空。

特別展では主に学芸員の野寺さんが作成された3Dモデルが展示されていました。ロケットや惑星などが並ぶ中、なかなか興味深かったのは「リンゴの重さを比較して、太陽系の惑星の重力を感じる」という展示です。同じ大きさのリンゴの模型が並べられていたのですが、重さのコントロールは単純に密度を変えただけという話が面白かったです。「普通に充填して作ってみたら300グラムくらいになったので、それを基準にして単純にパーセンテージで指定した」ということで、厳密には表面の分とか誤差は出ますが、ほぼ希望通りの重さになったということでした。

嶺重先生のお話のテーマは「ブラックホール」でした。大々的にニュースになった「ブラックホールの画像」を触知できるようにした模型が配られ、参加者へのお土産になっていました。会場には小学生が多かったこともあり、できるだけかみ砕いた説明でしたが、嶺重先生の研究生活半生のご説明の方が興味深かったという印象…(笑)。個人的には「アメリカの肉は硬かった」というフレーズが一番記憶に残っています(失礼)。

二球式プラネタリウム投影機の3Dプリンタ模型。紫色の本体。

3Dモデルに話を戻すと、プラネタリウムの「二球式プラネタリウム(投影機)」のモデルが一番楽しめました。やはり動く/動かせるものが3Dプリンタには向いているんでしょうか。隣に「古いプラネタリウム操作盤」が置いてあったのも良かったです。野寺さんによる「このつまみをひねるとココが動くんです」という説明が、模型なくしては活きてこないので、そういう意味でも「今日イチのコンテンツだ!」と感じた次第。まぁ工学屋が興味をもつネタだったこともありますが、学科の学生を連れて行っても、両方触れるので楽しいのではないかなー、と思いました。


さて、富山といえば海産物。「海老・蟹・蛸・烏賊・貝・鯖」アレルギーの自分としては結構ハードルの高い土地なのですが、せっかくなので「食べられる海産」を食べて帰りたい。魚卵や鯖以外なら食べられるので、お食事処の店頭メニューを見てみるのですが、「蟹いくら丼」「白海老マグロ丼」など私にとって「余計な一品」がついてきます…「フツーのいくら丼にして欲しい…」と呟きながら、テイクアウト系にすべく「ますのすし」を頂きました。

2024年10月振り返り

11月も半ばになるという時期に、ようやく10月振り返りです。10月は新学期の授業や運営業務に追われる秋がスタート…とはいえ気温はまぁまぁ夏でしたね。少し気になって昨年の10月のつくば市の気温とかを気象庁で調べてみたのですが、昨年も30度の日があったみたいです。しかし体感的には本当にこの10年間で日本は暑く、いや熱くなったな~と思います。

さて10月のスケジュールを改めて見返してみると、連日授業と会議で埋まっている中、イベントもいくつかありました。毎年呼んで頂いている大曽根小学校のUD講座、学園祭、ICCの報告会などなど…。月の後半に集中していました。

大曽根小UD講演

大曽根小学校の講演会、毎年6年生の総合学習の一環でお招きいただいています。私が総論をお話して、後半は学生さんたちが話します。天久保の学生さんたちは今回1人が手話を使い、もう1人は音声を使うという多様性を示すスタイルでした。

今年印象深かったのは「ボディソープの触覚記号」を知っている生徒さんが数名いたことです。同じ質問をつくば市UD研修で新規採用職員さんたちにも聞いていますが、だいたい100人中100人が知りません:)。子供たちの方が知っているというのは喜ばしいことです。しかしこのボディソープの触覚記号、2014年にJIS化しているはずなのですが、10年経ってもほとんど知られていないのが不思議です。シャンプー&リンスはものすごく知名度高いんですけどね。

学園祭

学園祭、まさか名前が変わるとは思っていなかった…とほとんどの教職員がひっくり返ったと思います。もちろん学生主体の企画ですから、命名も自由ではあるんですけどね。教授会や教員会議でも「春日祭日程」云々~って出てきていたのですが、近づいてみたら「秋月祭」なるものが準備されていました。誰も何も言えませんが、なかなか思い切ったなぁと感じました。小さい大学の小さい学園祭ですが、学生たちは頑張って企画して、多くのお客さんたちを集めていました。

この写真は点訳後援会のみなさんのブースで展示されていた「韓国のビール」で、点字は韓国語です。「맥주」のパーツが1点ずつ書かれているので5文字です。

ICC報告会

今年の報告会は、アイオワ研修がなかったことと参加人数が5人と例年より多かったことから、ICCだけで1時間使って実施しました。5人それぞれの視点を交えながら10日間を順に説明した後、それぞれの参加学生から同級生や下級生たちを意識したメッセージで締めくくり。印象に残ったのは「英語が分からないとどんどん顔が険しくなって、さらに話しかけてもらいにくくなる。だから笑顔を忘れずに。Don’t forge your smile!」というメッセージ。これはホント、とても重要なのですが、さてさて下級生たちに伝わったかどうか。

Brother / Lighthouse

怒涛の9月が終わってほっとしているのも束の間、2024年度、2学期がスタートしました。しかし9月は忙しかったです。15日にドイツから帰国して17日に京都に移動、京大開催のHI2024に参加してしゃべるダーツのポスタープレゼンをこなしてきました。

京大吉田キャンパス、百周年時計台記念館。

この発表用の荷物の発送について、ドイツに行く前にしておかないと間に合わないことは明白です。そこで出国前の9月5日にクロネコさんに持ち込んだのですが…。そこで告げられたのは「17日着はダメですね~。」というお言葉。そうなんです。日時指定は1週間より先はできないんですね。言われれば確かに当たり前、1年後とか指定して自分宛に送れば「無料倉庫」になりますもんね。というわけで、出国後の発送を総務にお願いしてドイツに発ちました。

そんな経緯の荷物も無事吉田キャンパスに届いており、実物ダーツとプロジェクタ投影というポスターらしからぬポスターを掲示した発表ができました。

東京大学安田講堂

そして翌週末、28~29日は「インクルVI」なるハッカソン・アイディアソンイベントのために本郷へ。視覚障害者も一緒に楽しめる「あそび(ゲーム)」を作るという、なかなか楽しい企画でした。

というわけで、京大から東大へハシゴした9月下旬、研究社のLighthouseを思い出したりしてました(-_-;。今の高校生は電子辞書なんでしょうね…

PDFのアクセシビリティ

しばらくコロナで開催されていなかった3月のWIT/AAC@筑波技大。久々に参加してきました。論文作成・発表アクセシビリティガイドラインが新しくなったということで特別企画的な講演があって、布川先生・若月先生・宮城先生などの発表を直接聞く機会に恵まれました。(苅田先生はオンラインでした)

しかしついつい気になるのがPDFのアクセシビリティ。代替テキストを実際に皆さん入れているのかどうなのか。アクセシビリティチェックをしているのか。実のところ私も日ごろ作成するPDFはかなり手を抜いてしまっています。スイマセン。予稿集の原稿などには多少気を使っているのですが、最後に代替テキストを入れ忘れて提出してしまうこともあったりします。

というのも、Wordのアクセシビリティ機能で代替テキストを図に入れても、PDFにした時点で文字化けしてしまったり、全部消えたりしてしまうのですね。結局、何か変更があってPDFにする度に「全部の図の代替テキストをAcrobat Proで入れなおす」という作業が発生してしまいます。そしてこれがかなり面倒なのです。このあたり、うまく回避する術をご存知の方に教えて頂きたいです。

プログラミング出前講座など

昨年度に引き続きR5年度もプログラミング出前講座を企画させて頂いています。3学期の実施ご希望が多く、1月末より2月中旬にかけて新潟よつば学園様・和歌山盲学校様・群馬盲学校様へ訪問させて頂きました。

新潟では科学へジャンプイン東京でも実施したバーコードワークショップを、和歌山盲さんと群馬盲さんではVBS体験、群馬盲さんの小学部の皆さんにはCodeJumperを体験して頂いたりしました。

CodeJumperは今回、3組同時に走らせるという形態で実施しました。これまでで多分最大数?だったのではないかと思います。最初Bluetooth接続がうまく行かず焦りましたが、なんとか復旧して楽しんで頂けました。

2023年秋振り返りその2

長くなってしまった秋の振り返りその2です。11月編。

サイトワールドにしゃべるダーツを展示

卒研生&Deborah先生と進めている音声化されたダーツ盤を、サイトワールドの本学ブースで11月1日と2日に展示してもらいました。残念ながら私は現地に行けなかったのですが、Deborah先生や学科の先生方にご対応頂いたおかげで来場者の皆さんにも興味を持ってもらえたようです。触れて頂いた方々、手間をかけて頂いた先生方、ありがとうございました。

筑波大の講演会イベントに参加

11月4日 土曜日、お隣筑波大学の雙峰祭にて「ChatGPT時代の就職、仕事、働き方」という講演会イベントに参加しました。クラウドワークスの吉田社長や人工知能科学センター長の櫻井先生のお話を間近で聞くことができ、とても勉強になりました。私からは本学科の卒業生の就職先実例やどのような環境で仕事をこなしているのかなどについて話しました。

土浦花火大会

同日の夜は土浦の花火大会でした。この花火大会は競技会なので様々な花火業者が競演します。せっかくの機会ということで自転車でDeborah先生と近くまで見に行ったのですが、どうやらカナダ的には「鳥とかWild aminalは驚いたりしないのか」の方が気になるようでした。そんなこと考えたこともなかったので少し反省です。後で知人から聞いたところによるとカナダでは「Fireworksがある!」と聞いて駆けつけてみると数発で終わってしまって日本人としてはかなり物足りないことがあるそうです。

そして今年は1発、空に上がらず落ちてきてしまい、地上で炸裂した事故がありました。「また中止か?」と心配しましたが、無事再開されて良かったです。

都内の私立中学生たちの見学対応

11月17日 金曜日、推薦入試の前日に都内の私立中学からの見学対応をしました。視覚障害者用の支援機器や触覚教材の体験などをしてもらいましたが、点字打刻の体験では短い説明にも関わらずきちんと裏点を理解して、自分の名前や部活についてなど、点字用紙に点筆で打つことを楽しんでいました。中学生の吸収力に感動しました。

東北大でDeborah先生の講演会を実施

ヒューマンインタフェース学会の国際交流企画という形で、Deborah先生のハイブリッド講演会が実現できました。現地参加は理事会メンバーがメインでしたが、東北大の学生さんも参加してくれて良い講演会になったと思います。

プログラミング概論でハノイの塔

この時期プログラミング概論では再帰関数の利用例として「ハノイの塔」を学びます。理解を助けるために3Dプリンタで模型を作って学生たちに渡すのですが、今年の1年生は人数が多いため前週からコツコツ作りためておきました。1セットだいたい1時間半くらいで出力するのですが、連続しては出せないので結構手間はかかります。レジンでの出力バージョンも作ってみましたがやはりFDMの方が手軽ですね。

つくば市観光基本計画の会議に参加

今年度、つくば市の観光基本計画の策定委員を務めています。11月末に第二回の会議がありました。観光課の方々が用意してくださる資料、筑波山周辺の駐車場データやホテル宿泊者の属性データなど、純粋に興味深いものが色々出てきて、勉強させて頂いています。

2023年夏振り返り

2ヶ月間ポストできていませんでしたが2023年の夏もあっという間に過ぎてしまいました。本学は他の国立大学と同様に前期が4月から15週、試験とフィードバック週も考えると8月半ばから9月末までがいわゆる「学生の夏季休暇」になります(ちなみにお隣筑波大はもともと3学期制だったのを5週ごとの春ABC/秋ABCに分けていたりするのでまた違ったりします…)。そして今年の夏は欧州研修ICCが復活。例年7月後半開催だったのが8月17日~23日とお盆明けになってしまいましたが、2023年の夏はICCでスタートしました。

ICC2023

ICC2023集合写真

リンツのヨハネス・ケプラー大学の障害学生支援センターIISと協定を結んでいることから、同センターのKlaus Miesenberger博士が主催するICC(International Camp on Communication and Computers)に2003年から参加しています。科学へジャンプ・サマーキャンプのモデルであったこのイベント、今年はチェコのテルチという都市での開催でした。テルチでは2013年にも開催されていて、当時訪れていますが、世界遺産の素敵な街並みが印象的なところです。今回は学生1名を引率しての参加でしたが、日程や価格などを検討した結果、台北経由となりました。色々と待ち時間の長いスケジュールにせざるを得ず、つくば駅から現地まで42時間かかって到着というなかなかハードな行程でした。

とはいえキャンプ自体は本当に学生にも引率教員にも刺激のある出会いや経験ができる場で、更にキャンプ後には、チェコ第二の規模を誇るマサリュク大学の障害学生支援センター、Teiresias Centerの見学や、同センター長のPetr Penaz先生にBRNOの街を案内して頂いたり、充実した滞在でした。ちなみにPenaz先生の専門は古典哲学や歴史的言語学…期せずしてモラヴィアのドイツ人とチェコ人の歴史や宗教的な変遷などのお話も伺うことができました。

ちびっ子博士

ちびっ子博士イベントの様子。右側の写真の触図セッションを担当しました。左側は宮城先生の弱視体験。

ICCから帰国した後はつくば市の企画「ちびっ子博士」。参加者は抽選で選ばれた10組×4のお子さんと保護者の方々、1セッション1時間です。障害者高等教育研究支援センターの宮城先生の行うワークショップと入れ替える形で5組ずつ30分実施しますので、同じ内容を8回繰り返す感じです。

今年はコンテンツを少し変えて、見ないで立体コピーを触れる触察体験のマテリアルを増やして、同じものを全員が触れるようにしてみました。

Deborah Fels先生来日

昨年夏のロビンソン先生に続き、今年度は9月半ばから約半年間、カナダTronto Metropolitan UniversityDeborah Fels先生をお迎えしています。

つくば市ユニバーサルデザイン研修

平成19年より毎年、本学はつくば市の職員の方への研修を実施しています。当初は複数日での実施とか、本学での実施やつくば駅周辺での実施などしたこともありましたが、ここ数年はつくば市庁舎で新人職員さんへの研修という位置づけで行なっています。

私は他の春日キャンパスの先生方数名と視覚障害体験系のワークショップを担当しています。その他、聴覚障害学生とコミュニケーションするものや、車椅子・高齢者体験キット・妊婦体験キットなどを装着して市庁舎の中を練り歩くものを天久保キャンパスの先生方や学生たちが実施しています。

担当している視覚障害体験では、弱視体験眼鏡を装着して申請書を書くというタスクをこなすのですが、最初体験した方が受付側にまわると、すごく丁寧で適切な指示になるのが毎年印象的です。あくまで疑似体験ではありますし、「疑似」の意味するところは研修中も伝えるようにはしていますが、想像力が鍛えられるというか何というか、とにかく体験してみるのは良い作用があるかと思います。

科学へジャンプ・サマーキャンプ2023

7 月15日(土)から17日(月・祝)までの二泊三日、本学にて科学へジャンプ・サマーキャンプ2023が開催されました。今回は15周年&10回目のアニバーサリー回でした。それが理由というわけでもないのですが、この機会に少し昔話を記録しておこうと思います。

思い起こせば2008年に、最初の同イベントを戸山サンライズで実施したのが15年前です。欧州のサマーキャンプICCの経験を活かせないか、と鈴木昌和先生、山口雄仁先生、渡辺哲也先生、故藤芳衛先生らから誘われ、主要メンバーに加えて頂きました。

その後2009~2011年の3年間、JSTの予算がつきました。この頃は各盲学校さんとのネットワークを強化したり、地域版がスタートしたり、じわじわと活動を広めて行った時期です。この期間の全国対象のキャンプは2010年と11年の2回でした。

そしてJSTの支援が終わった翌2012年に守谷で実施した後、さすがに毎年はスタッフが疲れてしまうな…と気づきました(ようやく…)。そこで2013はサマーキャンプを実施しない代わりにICCHPへの参加支援のみ行いました。1年お休みです。その後、2014年に第5回のキャンプを同じ守谷で実施しました。

しかし、主要メンバーの先生方が関わる国際会議のICCHPも偶数年開催のため、偶数年の夏は本当に忙しい…。そういった理由から、2015年から「奇数年での開催」とすることにしました。そして無事、2017年、2019年と連続3回、「あいち健康プラザホテル」で実施したというわけです。この頃利用した同施設は、駅からは遠いものの全てまとまっているので、視覚障害の中高生を集めるには非常に適した場所でした。

実は2022まで、とにかく会場の選定が大変だったのです。宿泊場所は4~5名が一部屋で泊まれるところ、さらにワークショップを行う会議室が近くて、食事もできて…。なかなか条件に合致する「安い」施設はありません。通常のセミナーハウスはだいたい宿泊がシングルですし、食事もビュッフェスタイルが多いのです。視覚障害の中高生を集めるにはあまり適していません。青少年自然の家のようなところは2010年に使っているのですが、他の団体との調整がかなり煩雑で入浴時間が当日まで決まらないなど、やはり困難が多かったのです。

そんな状況でしたので、「ホテルのツイン、歩いて移動」はある意味トライアルでした。しかしその結果、「意外と良いのでは」というのが実施してみての感想でした。従来の半分程度の人数でしたが、それ故参加した生徒たちは、全員の声と名前などを認識してくれたように思います。1泊2日ではありましたが、我々の方も全員の名前と顔を覚えることができました。

このように進めてきた科学へジャンプ・サマーキャンプですが、コロナのために残念ながら2021は実施できませんでした。しかしこのままズルズルとやらないでおくと皆さんから忘れられてしまう…という危機感があり、2022年の9月に「1泊で10名」という形式で実施することにしました。従来の1/3の期間、半分の人数です。既に「サマー」ではないような気もしますが、まぁ大学はまだ夏休みだから…などと言い訳をしつつ、場所は渡辺先生のお膝元、新潟となりました。さらにこの年は「ホテルで泊まって会場に移動」というスタイルを試してみました。

というわけで2023です。当初夏休みの実施を予定していましたが、私の都合がつかず、7月の連休を利用することにしました。ほぼ2週に一回程度、何度もオンラインでの委員会を重ね、エクスカーションとしてJAXAを訪れることになりました。そして富山の地域版、科学へジャンプ・イン北陸に参加しているインテックさんに協賛&ワークショップを担当して頂いたり、とても充実したイベントになりました。

詳細は後日報告書としてアップしたいと思っていますが、15周年・10回目という節目に本学で開催できたことはとても嬉しく感じています。

卒業生もボランティアで駆け付けてくれましたし、在校生も協力してくれました。小規模なイベントではありますが、無事執り行うことができたこと、ご協力いただいた皆様のお陰です。感謝いたします。

2008年当初、「何の実績もない団体が募集しても、応募してくれる生徒さんがいるかどうか…」と心配していた科学へジャンプ。今では「科学へ」と検索ボックスに入れると「ジャンプ」まで補完してくれるようになりました。本当に驚きです。今後も、なんとか細く長く続けていけたらなぁと願っております。

(検索ボックスの件、自分の環境だけなのかな…と疑う時もあるのですが、そうでもないです….よね?)

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