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SZS:講演に関するレポート

研究発表やMoDe(月曜デモンストレーション:SZS企画の講演会)などに関するレポート.

2005.7.11 更新

12/13 MoDe "Wie Blinde die Welt wahrnehmen"

ハンブルグ大学の神経生理学者,Brigitte Roeder博士による講演会.

内容

先天盲と晴眼者の,脳反応についてMRI画像などを交えて解説.残念ながら全てドイツ語なため,こちらの理解力が追いつかない.意味のある音を聞かせた時の反応とか,注意しながらの音像定位,会話をした時の反応などの電位変化について解説.

所感

よく聞き取れないのが悪いのだが,少数の被験者からとったデータでそこまで意味のある違いが出るのかなぁと疑問.帰国したらそのテの人に話を聞こう.

12/22 学生研究発表 数学ソフトの触覚ディスプレイ表示

Informatikの学生による研究発表.

内容

HandyTech社の触覚ディスプレイ,GWPを利用するソフトウェア開発についての報告.数学ソフトのMapleのグラフを表示する機能がメインで,軸を表示・非表示にしたり,各グラフを別々に表示したり,マークポイントをGWP側からコントロールしたり,勿論ズーミングなどもできる.Mapleは大学や高校(の高等専門教育)等で標準的に使われているソフトウェアだそうだ.

所感

GWPの中身はKGSのSC-5を6つ(3×2)並べたもの.数学グラフの表示というのは,触覚ディスプレイ利用としてはごく当然の流れだと思う.今後SZSに絡む学生による評価などが予定されているようだ.触覚ディスプレイ普及の弾みになればよいが…

1/20 TeDUB

オランダの視覚障害者に印刷物提供をしている図書館のような機関,FNBから,Sijo氏とHelen女史の2名がSZSに来訪.TeDUBについてのプレゼンテーションを行なったので聴講した.

TeDUBについて

TeDUBとは,UMLで書かれたダイヤグラムのような図を,視覚障害者がスクリーンリーダーで読めるようにするインタフェースである.

  • Current Node field
  • Node Information field
  • Connection field
  • Connection info field
  • Annotations

の5つのテキストフィールドを持ち,UMLからそれらの情報を抜き出してJAWSに読み上げさせることができる.また,JoyStickをグルグル回すことで,現在いるノードのどの方向に接続があり,その先にどのようなノードがあるのか知ることができる.2D Stereoや3D Soundなども使っているということで,Win2000以降,DirectXが必要,と言っていたので,DirectXを使ったサウンドだと思われる.

構成組織

開発にはブレーメン大学のTechnologie-Zentrum Informatikなど3組織が絡んでいるようで(他の2つは失念.ページに情報あるかも),FNBはユーザグループのうちのひとつだそうだ.他のユーザグループには,City Univ. Londonや,Unione Italiana Ciech di Verona, National Council for the Blind of Irelandがあるそうだ.

所感

TeDUBについては,国際会議のICCHPで同じセッションだったため,以前聞いたことがある.その時は画像解釈問題を言語記述で解決するツール,くらいにしか思っていなかったのだが,UML利用という側面を知って,ようやく全貌が理解できた.恥ずかしながらUMLに関しては知識がほとんどないのだが,視覚障害者間でのダイヤグラム情報の標準になってくれば面白くなりそうである.

1/24 MoDe "Augenlied" - Ein Film ausschlie?lich mit Blinden!

「AUGENLIED(眼の歌?)」というタイトルの映画を1時間半見て,休憩後ディスカッション

映画の内容

ま,全編ドイツ語なため正確な理解には程遠いが,10名ほどの盲人の生活を部分的に追うドキュメンタリー.フランスの女性アナウンサーや歌うマッサージ師,路上でバイオリンを家族?と演奏する老人などなど,様々な人が出てくる.

ディスカッション

映画製作側のゲスト2名(夫婦)を呼んでのディスカッション.いやはやこちらの人は議論好きだ.映画をもとにした議論など,そんなにあるものかと思っていたが,1時間みっちり続いた.

2/16 LEARNTEC2005

Klaus氏から1日券を頂いたのでLEARNTEC2005に参加.彼がモデレータを務めるワークショップをメインに見本市などを見て回った.

LEARNTEC2005

LEARNTECは,その名の通り教育・学習関連をテーマに扱う会議と見本市のイベント.会場はカールスルーエ国際会議場,KMK

会場

2/16はあいにくの雪.会場には8:45頃到着.Kongresszentrumに入ると,1階の見本市エリアはまだ準備中といった雰囲気.地下1階の会議場に降りると,受付が動いていたので券とバッジを交換し,クロークにコートを預け,同時通訳機を借りる.

SIEMENS製の年季の入った受信機で,大きなヘッドフォンをつけるのに抵抗があったので手持ちのインナーイヤホンを試すが,ジャック径が微妙に違う.残念.

キーノートスピーチ

キーノートはDr.Waibelによる「the Human Interaction Loop - Making Computers into invisible Helpers」.9:15-10:00.登壇者紹介が始まったが,翻訳者のやる気がないのか,回線が悪いのか,1センテンスに1語か2語単語がボソボソっと聞こえてくる程度.翻訳装置はあきらめるか,と思ったら本人の発表は英語.ありがたい.

内容の方は,CHILというプロジェクト(Computers in the Human Interaction Loop)について.会議や講演などにおける人と人とのコミュニケーション状況を多点カメラ計測し,顔の向きやジェスチャーなどから参加者の意図やコミュニケーション状態を推定し,適切な情報を人間側に与えるというもの.高速な画像処理を用いて計測を行なっている様子を紹介していた.プレゼンテーションとして,冒頭にコンピュータを机から叩き落すビジネスマンの動画があったのが印象的.PPTの作りこみも上手かった.勉強になった.

ワークショップ

Klaus氏のモデレートするワークショップは障害者の高等教育に関するもの.10:00-13:00のスケジュールで,80人程度座れる部屋において3人の発表者が講演.しかし参加者は14名と少々さびしかった.これは,WSの位置づけが会議において小さいからだと思われる.会議のメインはSessionと呼ばれるホールで行なわれる講演で,それもBusiness,Technology,Didacticsの3パラで進められるのだからWSの参加人数は少なくなって仕方が無い.(更にほとんどの人は見本市に流れるだろう)

さて,ワークショップの内容の1本目は,視覚障害のあるJan Hellbusch氏(DVBS)による視覚障害者のe-Learning状況.2本目はDr.Weberによる障害別のサポートについての話.3本目は一度大学で聞いたことのあるSijo氏によるTeDUBのお話.1,2本目は独語なので,PPTの内容を理解するので精一杯.しかしディスレクシアに対するサポートが視聴覚障害に並んで挙げられていたのが面白かった.やはり欧州でもディスレクシアの問題は存在するのだと実感.

見本市

見本市は,会議のあるKongresszentrumにも少々あるが,メインは向かいのSchwarzwaldhalle.かなりのブースが出ているが,ほとんどソフトウェア絡み.当然といえば当然だが.パンフレットもなかなか英語版が出ていない.しかし歩き回るうち,レオナルドダビンチプロジェクトの英語成果報告書を手にすることができた.

ハードウェアでは,1件だけ,ホワイトボードを入力機器にするデバイスが面白かった.会社はpromethean.ミミオのような後付ではなく,ボードそのものが製品のようだが,大きなタブレットのような感じ.サイトを見ると,UK,USA,Fr,Deに展開しているようだ.残念ながらinternationalの欄にJapanはない.

アルファベットの中に漢字があると嫌でも目に付く.何のブースだか分からなかったが,パネルに「人-Mensch」「学-Lernen」などとあり,何故か「存-Wissen」とある.「知」なら分かるのだが.中国語にはそういう意味があるのか?教えて欲しい.

4/29 REHAB2005

自宅と大学の間(といっても自宅寄り)に位置するMesse.2003年に出来たばかりの新しい見本市会場である.Learntecの時に訪れた国際会議場と母体は同じKMK.そのMesseで開かれているREHAB2005に4月29日(金),Gerhard氏と2人で訪れた.

REHABはもともとは,日本で言うところの国際福祉機器展のようなものだったのだが,視覚障害関連の展示がまとめてSightCityに移ってしまった(というか独立してしまった)ため,ほとんどの展示が車椅子など肢体不自由者支援の展示だった.Handytechが唯一ブースを出展しており,SZSに案内が届いていたので今回は訪れたわけだが,本当に他には視覚障害関係は見当たらない.Gerhard氏も,同社が何故まだここに出しているのか分からない,とコメントしていた.

しかし入り口には,Mainz市のバリアフリープロジェクトの紹介ブースがあって,そこに点字版の街の案内パンフレットが置いてあり,楽しむことができた.同ブースにはアンティークとも言える古い点字タイプライタも自由に触れる形で置かれていた.

そのようなわけで,特にコメントするのはHandytechブースしかないのだが,そこにはキャノンのスキャナを組み込んだOCRスピーチ装置,メインラインナップのピンディスなどが所狭しと並べられていた.その中で個人的に興味を引いたのは「USB2.0のカメラとPCによる拡大読書器」だった.L字アームにカメラをつけ,PCに画像入力して表示するというシンプルなものだったが,ファンクションキーで閾値モードや白黒反転,画像保存ができるなど,使い勝手はよさげだった.更にカメラ部は90度前方に向けることで,遠方を見ることもできる.その時は,キャップのようになった接写レンズを跳ね上げる.惜しむらくは,画像保存のサイズがQVGAなことか.もとの解像度はもう少しありそうな気がしたのだが.

また,各ピンディス用のデモ・拡大読書器用のPCが,2つともビクターのインターリンク(こちらではインターリンクという名前ではないが)だったのが面白かった.視覚障害ユーザに好まれる機種なのかもしれない(実は先日Gerhard氏も購入した).それにミツミのUSBブルートゥース(多分WML-C51APR)を接続し,ピンディスと通信していた.

4/29 EINSTIEG Abi

REHAB2005と同時期に,隣の建物ではEINSTIEG Abiという催しが開かれていたので帰りに覗いてみた.Abiというのは,アビトゥーア,すなわち高校卒業資格のことであり,EINSTIEG(乗車,アプローチ)という名前からも分かるように,いわゆる進路フォーラムのようなものだ.

しかし面白いのは,DBやCitibankなどの「就職対象」と,「進学対象」である大学(勿論ドイツは国立がメインなのでほとんど国立大学)や専門学校のブースが一堂に会しているところ.Webサイトはhttp://www.einstieg.com/である.

5/10 Seminar "Ist unsere Homepage barrierefrei?"

SZS:活動に関するレポートに書いた,入学前オリエンテーションO-Phaseに続く,5月のSZSのメイン行事である.ほぼ全員のスタッフが協力して,まる1日のセミナーを開催した.タイトルの通り,ウェブアクセシビリティについての公開講座だ.参加費用は1人あたり20ユーロ.フタを開けてみると,参加者は女性5名を含む12名.学内・学外様々なところから集まった.開催場所はO-Phaseと同じTelematikビルの367室.

午前中の内容

Klaus氏の挨拶から始まり,Angelikaさんが障害者の定義と統計情報,補償機器やソフトの紹介.DotViewについても触れてもらった.緑内障をGruener Starと言うことを初めて知った.(ついでにそれを辞書で引いて日本語の「そこひ」の漢字も初めて知った.)

コーヒーブレイクを挟み,Gerhard氏とAndreaさんがJawsで実演を始める.Gerhard氏がアクセスしているのと同じページをAndreaさんが別PCでアクセスし,プロジェクタに映すのだが,イマイチどこを読みあげているのか分かりにくい.Jaws側の画面を出した方がよさそうだったが何か理由があったのかもしれない(よく理解できず).悪いWebページ例としてKnorrのページが示され,画像テキストが槍玉にあげられていた.さすがのJawsでも,alt属性なしの画像テキストは何もしゃべらないので,リンクの「here」と「窓を閉じる」しか読まず失笑をかっていた.

午前は最後の15分で,Andreaさんが法律(Gesetz),標準化がらみの話題に触れた.日本のJIS化と同様ここ数年で明文化されてきているようだ.

昼食

内容とは関係ないが,メンザは遠いので,近くのイタ飯屋へ.例によって字だけのメニューから今日のおすすめを選ぶが,選んだポモドーロがはずれで,ものすごく辛い.午後までお腹の調子が悪くなった.同じメニューを食べたBarbaraさんもなんとなく辛そうだった.

午後の内容

午後はMichael氏,Gerhard氏,Andreaさんの3人による実習(Praxis)パートからスタート.実習といっても参加者がPCを扱うわけではなく,演者らがページソースを見せながら何が問題なのか論じる.ドイツではHTML準拠のページが3.9%しかない(http://www.heise.de/newsticker/の2005.3.30の記事)ということからスタートし,tableタグの使い方などまで説明していく.tableについては,どのようなidやheaderが音声で読む時に分かりやすいかというのは参加者は勉強になったようだ.個人的には,<de></de>タグで囲んだところはドイツ語の場合は流暢に読むが英語だとうまくよまないので,英語の部分は<acronym lang="en">で指定するというのが勉強になった.それからインプットボックスなどについても言及したが,maxlengthで名前の長さを制限してしまうのは別の視点からユニバーサルではないかも,と密かに思ったりしていた.

コーヒーブレイクを挟み,Praxisパート第二弾.W3Cの各種チェックツールを使っていくつかのサイトをチェックして何が悪いのか論じていく.Webアクセシビリティツールバーは面白かった.様々な眼疾のシミュレーションが自分の画面でできるのは楽そうだ.最後に質問がないか,と言われて「SZSのページの下にあるW3CとかBobbyとかのリンク画像間には文字列がないが何故チェックをパスするのか」と質問してみたら,Andreaさんにはぐらかされた.質問の意味が伝わっていないのかな〜と思ってセミナー終了後聞いてみたら,「実は昨日それに気づいて,今日はみんな気づかなくてよかったと思っていたのにMakotoに言われちゃったわよ〜」ということだったようだ.それならそうと最初に言ってくれないと.

所感

演者が話している途中でも,構わず参加者がインタラプトするのが印象的.やはりここでも話すことが基本だ.話は変わるがドイツでは,挙手の仕方が日本とは違って人差し指を立てるようにする.幼稚園で目にして「ふ〜ん,違うんだなぁ」と思ったのだが,大人もやるようだ.

また,この規模のこの手の内容の講座だと,日本では参加者に個別にPCが与えられて実習がありそうなのだが,そういうことはやらない.あくまで語り合うのだ.

5/30 MoDe "Regenerative Medizin und die Reparatur der Retina"

4月はスケジュールの都合で中止になったので,夏学期初のMoDe.チュービンゲン大学のKohler氏による講演.

内容

タイトルにあるように,Regeneration, 再生医療についての話と視覚障害を絡めた内容.いわゆる「耳マウス」に代表されるティッシュエンジニアリングの話からスタートし,網膜再生医療等に入っていく.途中,遺伝子組み換え食料の話題も入れられていた.ステムセル,臍帯血の話も出てきた.ステムセルについては,最近日本のステムセル研究所を知ったところだったのでタイムリーだった.日本の技術についてもコメントしていた.結論としては,「技術はある程度確立してきたが,人間に対する実施実験はまだまだこれから」というところ.

所感

実は講演場所に行って最初に思ったのが「聴講者に高齢者が多い」ということである.学生が少なかったのも一因だが,確かに老人が多かった.そして更に質疑応答が面白かった.皆自分のカルテや網膜写真を持ってきており,アカデミックな講演会が一転,「にわか診療相談」のようになってしまったのである.講演と違って図がないので,やりとりは聞き取れなかったのだが,後からKlaus氏に聞いたところ,やはり各聴講者が自分の疾患について相談していたらしい.演題を見て,自分にとって有用だと思うと参加する.そういう意味で,市民の大学への関心の高さと,大学自体のオープンさに感心し,またSZSのチラシの配布範囲にも少し驚いた次第である.

6/20 MoDe "Erlebnispfad der Sinne"

PedagogischeHochschule,PHの先生であるWilfried Fauth氏による講演.彼は特殊教育の先生志望の学生を教育している.様々な道具を室内に持ち込んでの講演だった.聴講人数はSZSのスタッフ5人を含む15人.

内容

いかにして様々な感覚に訴えつつ教育するか,という話.「Erlebnis:体験」「Wahrnehmungs:知覚」「Sinn:Sense」といったキーワードが並ぶ.正直なところ,PPTを使う講演ではなく,狭い部屋でしゃべり通すタイプの講演だったので内容理解は難しかったが,体験する道具が多かったので楽しめた.具体的には,様々な香りを発する物を入れた多数のビンや(樟脳もあった),金属パイプを使った共鳴実験器具,めのうにマイクを仕込んで音を聞かせるアンプなどを聴講者に体験させていた.

所感

触らせたり音を聞かせたり匂いをかがせたり,視覚以外の感覚を使って教育する手法はあちこちの盲学校系施設で見聞きすることはできるが,今回の講演では共鳴に関してパイプの固有振動数を変化させる実験が自分にとって新しく,面白かった.内径と同じゴム栓を用意しておき,それをずらすことで管長をコントロールする.そして固定したパイプを叩いて音を鳴らし,そこに近づけて共鳴する位置を探させるというものだ.

7/11 MoDe "Blinde in Japan"

自分の発表である.お客さんは残念ながら12名(SZS以外には5名).時期的に学期末(週末が最終日)なのと,英語の講演ということで客足が遠のいた様子.母国語講演じゃないと客が減るのは日本と同じなのかもしれない.

内容

自分の発表の内容を書くのも何だが,大学数や学生数,視覚障害者数などの日独比較に始まって,点字ブロック,音声信号,牛乳パックの切りかきやシャンプーのブツブツなどの触覚情報といった日常生活のインフラを説明し,研究ネタである触覚ディスプレイやトーキングサイン,ものしりトークといったハイテクデバイスの現状を話す.そして,日本語の概要を説明した後,IMEとスクリーンリーダー,点字の話をして如何に日本の点字システムが日本語と違うかを述べ,視覚障害者が苦労していることに言及.むすびとして街に溢れる視覚情報は晴眼者には便利だけれど視覚障害者には不便だよ,ということを話した.

ひととおり講演が終わった後は,聴講者が少なかったこともあったので皆にMIMIZUを見せることができた.講演内容に対する質問も,事後にざっくばらんにいくつか話せたので人数が少なかったのはそれはそれでよかったかもしれない.

所感

途中,話の流れがスライド間でうまくつながらない部分もあったと思うけれど,多分言いたいことは伝わったのではないかと思われる.


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